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2006年01月12日
ブログ・オン・ビジネス 企業のためのブログ・マーケティング
シックス・アパートが独自に取材したブログ活用事例集「Blog on Business」が書籍になりました。
PRやECサイトとの連携など、ビジネスシーンで利用されている、さまざまなブログの事例取材を続けてきたシックス・アパートだからわかる、ブログマーケティングのケーススタディ集です。
本コーナーでは特別に、書籍版「Blog on Business」の第1章の原稿を一部公開いたします。
書籍のお求めはこちらからどうぞ。
ブログ・オン・ビジネス 企業のためのブログ・マーケティング
シックス・アパート株式会社
第1章 企業のブログを「おもしろく」するには?
ブログ・マーケティングを成功させるための心得
シックス・アパート株式会社代表取締役
関信浩(せきのぶひろ)
いま、多くの企業が「ブログの活用」に注目しています。
1999年に登場したブログはまず個人ユーザーの間で急速に普及しました。2005年9月末時点で、日本国内のブログ利用者、いわゆる「ブロガー」は約473万人に上るといわれています(総務省調査)。
この個人ユーザー市場のブログの普及を見て、企業の間でもブログをビジネスに活用しようという動きが出てきました。2004年秋ごろから企業のブログ活用事例は急激に増えています。とりわけ、マーケティングや商品・サービス開発にブログを活用してより多くの顧客を獲得したい、既存のお客さんをがっちりつかみたいと考える企業の数は増える一方です。
ところが、そうした企業の多くが、必ずしもうまくブログを活用しているとはいえないのです。
そんな企業の悩みをまとめると、ざっとこんなところでしょう。
- 今までの企業ホームページといったいなにが違うのか、わからない
- ブログを立ち上げるとしても、誰に何を書かせればいいのか、わからない
- そもそも、ブログを立ち上げるとどんな効果が上がるのか、わからない
言い換えれば、ブログの定義がわからない、ブログの設置目的がわからない、ブログの運営方法がわからない、そしてブログの効果がわからない、というわけです。同様の悩みは90年代のインターネット黎明期、企業がホームページを作り始めたときにも聞かれました。おぼえていらっしゃる方も少なくないのでは?
では、そもそもブログとはなんでしょう?
ブログ・マーケティング5つの分野
企業が実際にマーケティングの道具としてブログを利用するシーンを分類すると、おおざっぱに次の5つになります。
- 広報・IR
- マーケティング
- EC(電子商取引)
- セールス・CRM
- イントラネット
広報・IR目的のブログは、簡単に言えば「企業そのものをマーケティングする」というものです。広報活動のターゲットは世の中のすべての人(実際にはテレビや新聞、雑誌といったメディアを通じて)、IRは企業の株主および株主候補です。広報・IR目的のブログの代表的なものが、いわゆる「社長ブログ」でしょう。
マーケティング目的のブログは、ここでは製品やサービスなど企業が販売している商品をマーケティングするためのものとします。ブログを使ったマーケティング手法で最も注目されているのはプロモーション(販促)ですが、製品についてのフィードバックを得るためにもブログは利用できますから、ブログは広くマーケティング活動全般に利用することができると言えるでしょう。
電子商取引目的のブログは、オンライン販売サイトなど、オンライン上で販売が完結するサービスのために利用されるブログを指します。この種類のブログは、上記のマーケティング目的のブログの一種ですが、あえて別に分類しています。電子商取引は、プロモーションから販売まですべてがオンラインで完結するためブログとの親和性が高く、売上や利益も直に測定可能であることが特徴です。
セールス・CRM目的のブログは、商品のマーケティングではなく、顧客との関係を重視したものです。ただし最終的な目的は、顧客に商品を購入してもらうことなので、マーケティング的な要素を多分に持つことになります。
イントラネット目的のブログは、企業内の社員同士のコミュニケーションを促進するためのものです。パートナー企業や代理店間とのコミュニケーションを促進する用途(エクストラネットとも呼びます。いわゆる「チャネル・マーケティング」という分野です)も、この分類に入れてかまわないと思います。ただし、本書ではイントラネットでブログを利用するケースについては扱いません。
ブログ・マーケティング3つのフェーズ
企業がブログを利用する分野について紹介しました。実際のブログの導入や活用には、大きく分けて次のような3つのフェーズがあるでしょう。
第1フェーズは、企業のメッセージを効果的に発信するためにブログを利用する段階です。
さきほど例にあげたライブドアの堀江貴文社長やニフティの古河建純社長、サイバーエージェントの藤田晋社長がブログを使って情報発信している、いわゆる「社長ブログ」が典型例です。「社長」の名を持ったブログは、等身大の企業の姿を一般の人に知ってもらうために有効な手段でしょう。しかも発信できるのは企業情報にとどまりません。「頻繁に更新する」というブログの発想を取り入れれば、顧客に対してタイムリーな製品情報を発信することも可能になります。宝酒造や日産自動車がこうした取り組みを実践しています。
Webで発信される製品情報の多くは、いまだに製品発表時のものに限られているのではないでしょうか。これは、技術的な難しさや社内体制の問題などのさまざまな制約のために、タイムリーな情報発信が難しいからでしょう。ブログを利用することで、こうした制約の一つを解消することができます。
第2フェーズは、より効率的な双方向コミュニケーションを、企業と顧客、顧客と顧客の間で実現するものです。
企業がブログで情報を発信し始めたのと並行して、一般ユーザーもブログで情報を発信し始めています。同じテーマのブログ同士を、リンクやトラックバックの仕組みを利用してつなげれば、仮想的なポータルサイトのようなものが作れます。双方向コミュニケーションがより活発になるわけです。
一つ、例を挙げましょう。インターネットサービスプロバイダやポータルサイトが「ブログポータル」というものを作っています。@niftyの「ココログナビ」やOCNの「Blogzine」がその代表です。これらのサイトは「ブログという手段を使って、ブログという商品を紹介している場所」と考えることができます。具体的には、ブログの楽しい使い方などをブログを使って紹介することで、ブログについて知ってもらい、ブログを利用する人を増やす、という仕組みです。
ブログ以外の商品、例えばデジカメや携帯電話といった製品や、旅行などのサービス商品を紹介することも、同様の手法で可能です。あなたの会社の商品に関する情報をブログを使って多くの人に知ってもらえばいいのです。有名人に利用してもらって、ブログを通じてその商品の良さを語ってもらう、という方法も考えられます。一般のユーザーにも商品についてブログしてもらい、それらの情報がワンストップで見られる商品ポータルを作る、という手もあります。
これらのステップでは、商品の「ファン」を作る効果があるだけでなく、顧客満足度やロイヤルティを維持する効果(リテンション効果)もあるでしょう。
ここで注意すべきは、ポータルを利用するユーザーを、自社で構築したブログサービスで囲い込まないことです。例えば「このポータルに参加するには、弊社のブログサービスを必ず利用する必要があります」というようなことは避けた方がいいでしょう。こうした囲い込みにメリットはありません。すでに多くの人がブログを利用し始めています。さまざまなブログサービスを利用してブログを書いている人たちに門戸を開くことで、より効果的なマーケティングが可能になるでしょう。
余談ですが、独自規格の日記サイトなどと比べてブログが速く広く普及したいちばんの理由は、だれでも利用できる業界標準のプロトコル(規格)を採用しているからだと思います。異なるブログサービスを利用しているブログに対してトラックバックが打てるのは、各ブログサービスが、業界標準のオープン規格を採用しているからです。もしブログサービスごとに異なる独自仕様を使っていたら、ブログは広く普及しなかったに違いありません。
企業によるブログ利用の第3フェーズは、企業に存在するさまざまな情報を、一般の人がブログを通じて自由に利用できる仕組みを整えることです。
顧客ロイヤルティの向上にスポットを当てるのであれば、自社製品のユーザーに自社で構築したブログを無料で利用してもらう、というのも効果的でしょう。自社のブログを利用してもらうことで、会社と顧客の結びつきを強めることができるからです。例えば、自社製品のユーザーに自社製品をあしらったデザインのブログを使ってもらえば、それだけでプロモーション効果が上ります。
さらに、自社のブログサービスを応用して、顧客にさまざまなサービスを提供することができます。例えば自社製品の画像やデータを簡単にユーザーが再利用できる仕組みをブログサービスに組み込めば、自社製品に関するブログ記事が自然と増えていくはずです。例えば、自社内にカタログ情報のデータベースがあれば、それを一般ユーザーが容易に利用できる仕組みをつくることが考えられます。
こうした仕組みの先駆者は米アマゾン・ドット・コムです。アマゾンは、社内に持つ商品データを検索・再利用できる仕組みを外部に公開することで、一般ユーザーのブログから書籍を簡単に紹介できるようになっています。アマゾンは、「Webサービス」と呼ばれる仕組みを使ってこの仕組みを実現しています。ここではアマゾンのケースを簡単に紹介いたしましょう。
マーケティングにブログは不可欠に
2005年秋、「マーケティングにおいてブログの重要性が高まっている」ことを示すデータが相次いで公表されました。
一つ目はEストアーが2005年10月19日に発表した「購入者から見たウェブショップ運営者のブログについて調査」。この調査によると、商品を購入する際に、ショップ運営者のブログが「参考になる」とした回答者が54.8%に達しています。またブログで読みたい情報は、「セール情報(32.6%)」と「商品情報(31.7%)」で、購入のためのさらなる情報を求める声が上位を占めました。ビジネスでブログを利用する際には、まず既存の情報提供を拡充することが有効だ、という仮説が立てられます。
ただし、ショップ運営者のブログを通して商品を購入した経験については、「ない」が88.1%となっています。これは、「ブログを使って顧客予備軍を集め、最終的にショップに誘導する」というサイトナビゲーションに、まだまだ改善の余地があるということでしょうか。
ブログが真の効果を発揮する「商品情報」は、カタログ情報の転記のようなものではなく、ブログだからこそ提供できるタイムリーな情報であったり、生の情報であったりするようです。例えば照明器具販売のてるくにでんき(161ページ参照)は、照明器具の使用事例ブログを立ち上げ、実際に販売した照明器具が部屋の中でどのように使われているかを紹介しています。これが購買の決め手になることが多いそうです。「照明器具が単体で写っている画像を見ても自分の家に設置したときのイメージが湧かないが、人の家に実際に設置した写真があれば、自分の家に置いたイメージをスムーズに連想できる」(てるくにでんきの堂園秀隆氏)からでしょう。
もう一つは、電通の「ネットアクティブ男女の情報&消費生活」(2005年10月18日付日経産業新聞より)です。日経産業新聞の記事によると、消費者が商品を知ってから購入するまでの過程において、新たに「インターネットで商品評価チェック」と「意見共有」という行動が加わったそうです。商品がネット上で販売されているかどうかを問わず、意見共有(=口コミ)が大きな影響力を持つようになったと言えるでしょう。
「ブログによる口コミを利用して、企業が提供する情報以外の情報を積極的に収集する」という新しい消費者の姿が見えてきます。ブログを利用してマーケティングに取り組む企業は、自社が提供する情報が、消費者の購買プロセスにさまざまな影響を与えていることを認識すべきです。
けれども、せっかくブログマーケティングの可能性が広がっても、肝心の自社のブログがお粗末では話が始まりません。
まず、自分の会社のマーケティングの何に関してブログを立ち上げれば有効なのか?それを考え、もしあなたの会社がまだブログを始めていないのであれば、明日からでもスタートするつもりで用意をしてください。
企業が抱えるブログに関する悩みに対する、私なりの見解を改めてまとめます。
- 1.今までの企業ホームページといったいなにが違うのか、わからない
- ブログは、来訪者(顧客や潜在顧客)とコミュニケーションするWebサイト。従来のマスメディアとは異なり、顧客との双方向コミュニケーションを実現できるため、企業と顧客の間で、シンパシーや価値観の共有を通じて、自社の強力なファン(支援者)を育てていくことが可能です。
- 2.ブログを立ち上げるとしても、誰に何を書かせればいいのか、わからない
- 社員は日々、顧客や潜在顧客とさまざまな形でコミュニケーションしているはずです。ブログを使ったコミュニケーションも、従来の顧客とのコミュニケーションの延長線上に位置づけられるべきでしょう。企業ホームページを含め、従来のマスメディアを使ったマーケティングの多くが一方向のコミュニケーションだったのに対して、ブログによるコミュニケーションは「双方向」であり、顧客は企業からのレスポンスを期待している、ということに注意するべきでしょう。
- 3.そもそも、ブログを立ち上げるとどんな効果が上がるのか、わからない
- 企業はブログのどこで失敗するのか、さんざん書いてきましたが、一方で、ブログは非常に低コストでそして迅速に始められます。もたもたしていてはダメです。失敗を恐れず、しかし論理的に考え抜いて、ブログをスタートしてみてください。
そのために必要なノウハウと、参考になるケーススタディは、すべて本書に載っています。
ブログ・オン・ビジネス 企業のためのブログ・マーケティング
シックス・アパート株式会社 
日経BP社 2006-1-5
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- 投稿者 Six Apart
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