Blog on Business
2005年02月21日
「bk1」がMovable Typeを使う理由
企業のMovable Type実用例
株式会社ビーケーワン
http://www.bk1.co.jp/
「ウェブログは、"顔の見える本屋"というコンセプトを実現するのに最適なツールでした」
オンライン書店の「ビーケーワン(bk1)」は、常時60万タイトルを超える書籍を取り扱っており、最速で注文当日に書籍を届けるというきめの細かいサービスを提供している。"顔の見える書店"を目指し、顧客との距離をさらに近づけるため、同社は2004年3月にウェブログ・サイトからのトラックバックを受け付けるブランチ・サイト「bk1.jp」を開設した。また同年7月には、Movable Type 3.0日本語版を使用した「bk1スタッフレビュー」を公開し、スタッフ約20名のオススメ書籍をウェブログ形式で毎日公開している。同社がウェブログを導入した理由は何か、また同サイトに対する反応やウェブログ形式のメリットなどを尋ねてみた。

「bk1スタッフレビュー」のトップページ
■RSSで売上ランキングを配信
ビーケーワンでは数年前から、グーグルのWebサービスを通して、インターネットのパワーユーザーが市場の流れを作るという大きな変化を感じていた。競合企業であるアマゾンもまたWebサービスを提供していたため、ビーケーワン独自のサービスを構築しようと試行錯誤していたとき、ウェブログ機能に含まれているRSSフィードに注目。この機能を使って書籍の売上ランキング情報を提供することを考えた。そこで、カテゴリー別、新入荷一覧、話題の本棚など約20種類の売上ランキングのRSS配信を行う「RSS配信サービス」を2003年11月に開始した。ビーケーワンのアフィリエイト・プログラムである「bk1ブリーダー・プログラム」に参加しているユーザーは、販売提携IDを埋め込んでRSSを出力するサービスも提供している。
また、デスクトップに常駐してRSSフィードによる情報を表示するクライアント・ソフト「bk1ティッカー」の無料ダウンロードも開始した。RSSで配信されている20種類のランキングのほか、おすすめタイトルを紹介する「話題の本棚」、入荷した新刊を一覧できる「新入荷一覧」などを表示する。ビーケーワンが提供する情報以外にも、他ウェブログの情報を表示するようにカスタマイズできる。bk1ティッカーは最初の1週間で1000件以上がダウンロードされ、予想以上の反応があったという。

株式会社ビーケーワンの専務取締役兼COOの河野武氏は「JavaスクリプトによるRSS情報のウェブログ表示は増えていたので、RSS配信を始めたらユーザーが自由に活用してくれるという期待がありました。当時はまだ大手新聞のRSS配信も開始されておらず、企業のRSS配信として先駆的だったこともあり、大きな注目を浴びました。それ以前は、ウェブログによる書籍のアフィリエート・リンクは大部分がアマゾンだったのですが、RSSの配信を始めて1カ月もしないうちに、ウェブログでビーケーワンのリンクを見かけるようになりました。ウェブログはインターネット上で一番反応が速く新しいものに敏感な人々が集まる場所だと実感しています」と語る。
■トラックバックを使って書評を収集
ウェブログ機能を使った最初の試みとして、RSS配信の大きな手応えを感じた同社は、次にトラックバックを使った書評や口コミの収集を行うサイトの構築を手がけた。2004年3月に開設した「bk1.jp」は、ウェブログ・サイトからのトラックバックを受け付けるブランチ・サイトであり、まとめ買いの買物カゴ機能や、買物カゴのデータを他のユーザーに対して送信する機能もついている。また、bk1ブリーダー・プログラムのユーザー向けには専用リンクも提供され、購入金額の3%がポイント換算される。

bk1.jpは、通常のアフィリエート・プログラムのように個人サイトからビーケーワンへトラフィックを誘導するだけではなく、ビーケーワンから個人サイトへという逆のリンクを作ることで、アフィリエーターとの別の関係を構築することも意識している。「アフィリエートにはいろんな要素はあるものの、その対価はお金であり、キックバックの割合ですべてが決まるといった傾向になりがちです。しかし、書籍は心に訴える商品であり、紹介者がどれだけ感動し、その作品に共感しているかが鍵になるので、金銭的なメリットだけという関係性を超える必要を感じていました。書評を書く人々は一般的に、多くの人々に自分の書評を読んでもらいたいという欲求を持っています。アフィリエーターに登録してもらっている個人サイトのURLの70%がウェブログ系のURLであり、情報発信したい人とウェブログ・ユーザーが重なっているので、トラックバックによるページビューの増加が、金銭以外の対価として大きな要素になると考えました」(河野氏)
bk1.jpの開設から1年足らずでトラックバック件数は2万件を超え、現在も増え続けているが、そのほか予想もしなかった大きな効果があったという。それは、売れ筋の書籍だけではなく、名著だが知られていない書籍やロングセラー物などが売れ出したことである。ECサイトでは、トップページは検索する手間を省くために主流層に受け入れられる新刊や売れ筋を掲載せざるを得ず、1カ月前に売れた本や地道に売上を伸ばしているような本は掲載されない。現在、在庫切れや絶版を除いて流通している書籍は60万アイテム以上あるが、よく出る本はそのうちの数%かよくても1割程度であり、そのほとんどが今売れている新刊書というのが現実だ。しかし、読者に根強い支持を集める書籍がトラックバックされることにより、隠れた名著が表に出てくるようになったという。
販売される書籍アイテムに幅が出て来たことから、売上も増加したという。ベストセラー商品に頼るのは、企業としてはリスクの高い経営方法であり、書店も同様に、新刊本だけではなく既刊本の売上比率を高めることで経営が安定する。しかし、既刊本は自ら仕掛けていかないと売れない上、薦め方を間違えると逆に顧客が離れていくという難しい分野でもあるという。トラックバック対応サイトは、こうした課題に対する思わぬ解決策となった。
■ウェブログで"顔の見える本屋"を実現
顧客との関係性をさらに深めるために、ビーケーワンでは本格的なウェブログの導入に踏み切った。「Movable Type 3.0日本語版」を使った「bk1スタッフレビュー」を2004年7月に開設、スタッフ約20名のオススメ書籍をウェブログ形式で毎日公開し、コメントやトラックバックを受けつけている。

bk1スタッフレビューへのトラックバック一覧
河野氏は、bk1スタッフレビュー開設の経緯をこう語る。「ビーケーワンでは、ニフティの書籍コーナーである@niftyBOOKSを運営しており、2004年5月頃、ココログ(注:ニフティのウェブログ・サービスであり、シックス・アパート社の『Type Pad』を採用)から@niftyBOOKSにリンクを張るアフィリエート機能を追加する話をしていました。その際、ビーケーワンでもスタッフのウェブログをやりたいという話をシックス・アパート社にしたところ、Movable Typeでサイトを立ち上げようという話になったのです」
ビーケーワンの本家サイトでは、顧客による書評がすでに10万件を超えているが、これらの書評とウェブログ形式のスタッフレビューは、その目的が違うという。「ウェブログは、"顔の見える本屋"というコンセプトを実現するのに最適なツールでした。どのECサイトにもレビュー機能はありますが、店員の顔はなかなか見えてきません。ECサイトの多くが効率化を進め、無駄なコストを削減するなか、自動販売機と同じようになりつつあります。ビーケーワンでは、自動販売機だとは思ってほしくないので、こんな人物がこんな本を選んでいるという風に実際の人間を出し、逆に顧客とのやり取りを増やすためにウェブログを開設しました。その結果、問い合わせのメールが増え、売上にも反映されてきました」(河野氏)
また、スタッフにとっても、顧客心理を把握することに大きく役立っているという。アフィリエーターの過半数がウェブログを運営するなかで、販売側がウェブログについて知らないとなると、メールでのやり取りから書籍の選択にいたるまで、微妙なズレとなって表れる。顧客が何を求めているのかをどこまでリアルに感じて追求できるかが重要である。しかし、ビーケーワン内部ではRSS配信を始めた2003年11月の時点で、ウェブログについて深く理解しているスタッフは皆無に近かった。bk1スタッフレビューを通して、現在ではほとんどのスタッフが自分のウェブログを運営し、社内におけるウェブログの認知度や利用度も大幅に上がったという。
■書評の投稿からトラックバックでつながる世界へ
現在、ビーケーワンではWebサイトの大幅リニューアルを行っている。今後は、bk1.jpのトラックバックやウェブログ機能をすべて本家サイト(bk1.co.jp)に統合し、全部ひとつのサイトで管理することを目指している。サイト・リニューアル後を目処にbk1スタッフレビューの内容もリニューアルするとのこと。
また、従来のようなビーケーワン・サイトに書評を投稿するというスタイルではなく、自分のウェブログに書評を書き、それをトラックバックにより収集する方向性を強めたいとしている。その理由は、オンラインでは立ち読みができないので実際に読んだ人の書評が重要であるにも関わらず、現在の投稿システムでは関係者の投稿や悪意のある批評により客観的な視点が見えくにいからである。そこで、より本音に近い個人のウェブログに移行させることを狙っている。
ネットユーザーに限定した調査でも、書籍のオンライン購入率は10冊中わずか2冊であり、主流はまだ店頭での購入になっている。オンライン書店の協調フィルタリングによるレコメンド技術は、全体の20%しか把握していないことになる。その点、ウェブログの書評は、オンラインで購入した書籍に限らないため、購入履歴には表れない個人の購買履歴を把握することができる。ウェブログを使えば、個人情報を特定しない形で収集した情報をレコメンド機能に活用することができる。
この発想を一歩進めると、書籍に特化したソーシャル・ネットワーキング・サイト(SNS)を構築し、互いに情報交換して書籍をレコメンドするという可能性が広がってくる。現在、pingのエントリーURLはトラックバックの標準形式に入っているので、誰がどの書籍にトラックバックをしたかを把握できる。SNSの設定により個人が承諾した場合に限り、同じ書籍にトラックバックをした人々同士がつながるといったサービスにより、将来的には売り手と買い手といった概念がなくなり、誰もが書籍を探して紹介者になる世界がやって来るかもしれない。

株式会社ビーケーワンの専務取締役兼COOの河野武氏
河野氏は、最後にこう語った。「いつになるかは分かりませんが、ビーケーワンのサイトに対して書評を投稿するという形態ではなく、基本的には全員が個人のウェブログをもち、ビーケーワンにトラックバックをしてもらい、彼らにインセンティブが支払われるという関係にしたいですね。スタッフ全員にもウェブログを持たせて、書籍をキーワードにつながっていく。サイト上では、スタッフとユーザーが書いている書評が同様に並び、この書評は書籍を1000冊読んでいる人によって書かれているなど、読者にとって参考情報をつけることができれば面白いと思います」
■事例データ■
・Movable Type3.0商用ライセンス
・ウェブログをはじめたのは:2004年7月
・はじめた理由:マーケティング
・制作を担当したのは:社内
・何か手ごたえはありましたか?:顧客とのコミュニケーション、販売増加
(Text/Photo by 長野弘子/Hiroko Nagano, http://blog.digi-squad.com/)
- 投稿者 Blog on Business 編集部
- 12:06
- カテゴリー Movable Type
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