Blog on Business
2006年10月11日
東宝ミュージカルがMovable Typeを使う理由
日本初の洋式劇場として伝統ある東京・丸の内の帝国劇場。長年演劇ファンに支えられてきたここの舞台なら、黙っていても固定ファンで大入りになりそうだ。しかし、今年4月からはミュージカルの舞台に合わせ、特設サイトと平行してブログで公演を盛り上げるプロモーションを行っており、しかもそれが帝劇ミュージカルの満席率ランキングを変えるほどの力を持っているという。演劇ファンとブログの接点はどこにあるのだろうか?

東宝が運営する「マリー・アントワネット」のブログ。舞台裏の模様も掲載されている
■「若手実力派」ミュージカルを成功させるために
2006年1月、ブログ利用を発案したのは、東宝株式会社演劇部宣伝室の宣伝プロデューサー 上田秀明さん。もともと、上司も含め、東宝の演劇部にはネットの掲示板などをチェックして、公演について「生の声」を拾う雰囲気があったのだという。そんな中、6月からの公演が決まったミュージカル「ミー&マイガール」は、若手実力派ミュージカル俳優を起用しての舞台だった。「主演二人は若手でもしっかりした実力の持ち主ですし、ストーリーもすばらしい。でも、知名度の点ではまだまだこれからです。こうした舞台がうまくいかないと、『やっぱり舞台は知名度がないと人を呼べないのか』 となってしまう。日本の演劇、そして主演二人の未来のためにも、なんとしてもこの舞台を成功させねば、そのためには何でもやろうと思いました(上田さん)」というわけで、選んだのがブログだ。

「ミー&マイガール」のブログ。東宝が運営するブログの第1弾となった
■生イベントのぬくもり
映画ではなく、生身の人間が演じる演劇に対しファンが喜ぶ部分の一つに、ライブイベントがあるという。「幕間にちょっとしたおまけがあったり、カーテンコールで今日は俳優がこんな挨拶をした...という小さなイベントのライブ感を、お客様はとても喜びます」。ライブ感を伝えるといえば、更新に1週間かかる公式サイトではなく、その日のうちに掲載できるブログが適しているのは言うまでもない。「俳優紹介の動画ファイルを掲載したり、歌やダンスをお客様が一緒に楽しめるポイントを紹介する『予習』 コンテンツを入れたりと、徹底的にお客様が楽しめる内容を盛り込みました」と、テキスト、写真の標準的な構成に加え、動画や音声ファイルをダウンロードできる盛りだくさんな内容とした。実際に動画の掲載にあたっては、俳優所属事務所、曲などの権利関係者にひとつひとつ了承を取る作業が必要だ。1公演でも50人以上いるという出演者の数を考えればとてつもない手間だが、それもクリアし、上田さん自ら動画の撮影にあたってコンテンツを作り続けた。そのかいあって、「ミー&マイガール」は好評のうちに公演を終了した。
■動画でこれでもか! とお客様を楽しませる
「ブログはいける」との手応えから、7月からの「ダンス・オブ・ヴァンパイア」公演では動画コンテンツの内容も拡充して、ブログによる盛り上げを準備した。コウモリのキャラクター「リー君」を設定し、リー君が案内役となって公演の見どころを紹介するという凝った内容。公演が終わるとリー君はルーマニアに帰ってしまう、というちょっとしたストーリーも楽しめる。動画は「カーテンコールを一緒に歌い、踊る楽しみ方」などを予習できる内容で、映像に効果を入れたりストーリー性を持たせるなど、一段と手間暇をかけた内容とした。
公演の千秋楽後1ヶ月間公開したブログのコメント欄には、承認制にもかかわらず毎日数十~百以上の数が寄せられる盛況ぶりとなった。公演自体も、数十回足を運んだリピーターが出たという。「満席率(席数×公演日数を100とし、公演全体で席が埋まった割合)で過去6年の歴代3位を記録した公演となりました」という。満席率では、1位から5位までを、知名度の高い「エリザベート」という演目が占めており、「ダンス・オブ・ヴァンパイア」はそこに食い込んだというのだから驚くべき成功だ。

「ダンス・オブ・ヴァンパイア」のブログ。ブログの閉鎖時には、閉鎖を惜しむ声が多数寄せられた
■「祭り」感を共有するメディア
「ダンス・オブ・ヴァンパイア」公演におけるファンのブログ利用法を見ると、
・事前に俳優紹介や見どころ案内を読んで期待感を高める
↓
・情報を活かして公演を楽しむ
↓
・感想などをコメント欄に寄せ、名残を味わう
といった使い方をしているようだ。「とにかく感想を書きたかっただけなので、私信に近いこのコメントは掲載しないで欲しい」というコメントも多かったとのこと。「公演前のワクワク感や観覧後の盛り上がりをどこかにぶつけたい! 共有したい!」という気持ちの受け皿となっていた感がある。ミュージカル公演という「お祭り」の喜びを、客を巻き込んで共有することに成功したのだと言えそうだ。
「祭りのエネルギー」というと、ややもすると炎上などを起こして単に迷惑なもの、と捉えられる場合も多いが、丁寧な演出でうまく流れる道筋をつければ、盛り上がりを産み出すことができるのだ。ただし、「こうした盛り上がり方は2ヶ月間の公演、コメディタッチの演目という条件によるものだと思います。ロングラン公演などの舞台には、また違う方法が必要でしょう」と上田さんは冷静に分析している。
ストーリーの雰囲気もかなり違う次回演目「マリー・アントワネット」には、「従来の演劇ファンとはちょっと違う、これまでミュージカルを見たことがなかった人に、ブログを通してアピールできないか模索しています」と、トラックバックを利用したプレゼントキャンペーンなどのプロモーションを探っているという。演劇+ブログ利用法にもさまざまなパターンがありそうだ。

今回お話を伺った上田秀明さん
事例データ
・ Movable Type ホスティングライセンス(アライドアーキテクツ株式会社)
・ サイトを公開したのは:2006年4月3日
・ はじめた理由:ミュージカル「ミー&マイガール」プロモーションのために、何でもできることをしようと思った。
・ 制作を担当したのは:アライドアーキテクツ株式会社
・ 何か手ごたえはありましたか?:コメント欄で、お客様の作品への愛着度を直接感じることができた。ブログの語り手を宣伝マンとしたことで、広報宣伝という仕事への興味も持ってもらえたようだ。
- 投稿者 Blog on Business 編集部
- 17:21
- カテゴリー Movable Type
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