Blog on Business
2007年12月19日
女性誌『VOCE』の「Beauty Kitchen Eat me!」がMovable Typeを使う理由
雑誌のコンテンツをブログでデータベース化
『Beauty Kitchen Eat me!』(以下、Eat me!)は講談社の女性誌『VOCE』のウェブサイト『i-VoCE』の中にある、美に効く料理のレシピが満載のブログで、Movable Typeで構築されている。もともとはVOCE本誌で連載されている料理のレシピ連載のウェブ版であり、過去のレシピもデータベース化された便利なサイトだ。

i-VoCEのトップページ。「美界コラム」はTypePadを利用するなど、ブログを活用している
■雑誌とウェブサイトの連動型ビジネスモデルに
Eat me!は、去る2006年12月のi-VoCEのリニューアルのタイミングに合わせてオープンしたものだという。
i-VoCEは本誌VOCE最新号の目次を掲載したり、一部の特集や記事が覗けるといった、本誌を補完する内容を重視したウェブサイトだった。それが、i-VoCE単体でも広告が取れ、収益を上げられるコンテンツとして力を入れようとリニューアルされたのが、2006年12月。それを追いかける形で、2007年の1月からEat me!がスタートした。
「まだ、本誌に連動して出稿をもらう場合も多いのですが、最近では、ウェブの広告はやらないことで知られていたハイブランドがVOCEの雑誌の名前で入ってきてくださったり、ウェブだけで広告を出してもらうケースも増えてきています。リニューアルはそういった状況の変化に対応して、内容を強化しようという意図のものです」。
というのは『i-VoCE』全般を統括しているVOCE副編集長の山口志門さん。
かつてはインターネットの普及は雑誌にとって命取りになるのではないかということがよくいわれたが、VOCEは雑誌のブランドを誌面だけでなく、ウェブの両方で展開するというビジネスモデルに転向している。
「i-VoCEを始めた2000年当時は、上司も雑誌の中身がウェブで読めるのなら誰も雑誌を買わなくなると考えていたんです。だから、ひと月遅れで載せるというところまで取り付けるのがやっと。でも、今はもう両方とも伸ばすことを考えてやっていくべきだと思います」。
■ブログに向いている雑誌コンテンツとは
ここで重要なのは、単にウェブでも雑誌と同じことをやるというのではないという部分だ。雑誌とウェブを連動させるといったことを考える際、ただ単に雑誌でやって来たことをウェブに持ってきてもうまくいかない場合が多い。雑誌というものは雑多な内容、ジャンルの記事が載っていることに価値があるが、ウェブの場合は逆にテーマを絞られていて嵩のあるコンテンツが価値を生む場合が多い。
Eat me!はそこがよく考えられているブログといえる。VOCE本誌の数ある連載の中から、このレシピ連載をブログとしてウェブコンテンツ化したのは、理由があってのことなのだという。
「連載をただデータ化するという発想ではなく、ウェブコンテンツに向いている連載は何だろうと考えたんです。単なる読み物の連載であれば、HTMLのウェブサイトでもかまわなかったんですが、Eat me!はただのレシピではなく、効用、素材といった切り口があって、ブログ向きなんじゃないかって」。
と話してくれたのはi-VoCE編集スタッフの烏田千洋さん。Eat me!のサイドバー部分には、「むくみ解消」「アンチエイジング」「コラーゲンの素」など、効用ごとにエントリーをピックアップすることができるリンクが並んでいる。また、その下には「あさり」「いちご」「かぼちゃ」 と材料ごとのエントリーにもリンクが張られている。これらはMovable Typeの"カテゴリー"の機能が利用されていて、1つのエントリーに複数のカテゴリを設定することにより、効用と素材の両方から検索できるよう工夫されている。このような配慮は、サイト制作スタッフである株式会社ラス・ネットワークとの協議から生まれたという。

エントリーには応用例のレシピも紹介されている。サイドバーでは、効用や素材からレシピを探せる
また、サービス開始の時点からある程度貯まったコンテンツとして見せることが重要であるとして、過去の連載29回分(2007年12月現在)、印刷所にデータが残っていたものを引き上げて、すべて再構成する形でブログのエントリーとしてデータ化した。これは、ウェブコンテンツの価値をよく理解しているからできたことだろう。ブログというツールの価値のひとつは、エントリーとしてアップされたウェブページがオートマチックデータベースとして蓄積されるところにある。
「紙の雑誌と違ってウェブはデータを貯められることが強みなんですね。VOCEはファッション誌と違って、中心はコスメです。ファッションは季節が変わると過去のものになってしまいますが、コスメにはロングセラーも多く、積み上げたものを生かせる世界なので、ネットとの相性が良かったんだと思います」(山口さん)。
i-VoCEのメインコンテンツは、コスメの商品のデータベースだ。商品の情報に、口コミによる評判が付く仕組みになっている。雑誌とは違うネットならではのコンテンツがi-VoCEでは展開されているのだ。

「コスメデータベース」では、製品の仕様やユーザーからの口コミ情報が掲載されている
■発想は競馬から? ブログが発想転換ツールに
これらのように、貯めていったデータを切り出すことでコンテンツになるというのは、毎月毎月新しいことを追い求める雑誌の編集者の発想とは、かなり異なる考え方のように思われる。
「多分、僕自身がデータベース的なものが大好きなんだと思います。全国のうまい食べ物屋をストックしていくこととか......、あとは競馬ですね」。(山口さん)
なるほど、これまでのレースの成績や血統など、過去のデータに価値を置く競馬が趣味だとあれば納得。
「Eat me!はひとつのトライアルとして思っていて、これと同じように、データベースになるものは、すべてウェブコンテンツとしてブログ化できるんじゃないかというのが僕の考え方です。レシピ以外にもデータベース化できるものはあるはずです。今後は雑誌のひとつひとつの企画を吟味して、ウェブのコンテンツを増やしていきたいと思っています」。
「i-VoCEのコンセプトは、"Live"と"Archive"っていってるんですね。ブログを使った展開はこれからもあると思います」。(烏田さん)
「LiveとArchive」というのは、まさに雑誌とウェブの関係性ともいる。そしてブログの特性であるフローとストックにも通じている。雑誌とウェブの連動は、今後も出版の世界で進んでいくことが予測されるが、それを考える場合に、ブログ、もしくはMovable Typeというツールがひとつのヒントになることは間違いなさそうだ。

左から烏田さん、山口さん(ヴォーチェ編集部)、横井さん、大鷲さん(ラス・ネットワーク)
事例データ
・Movable Type(基本ライセンスパック)
・ブログをはじめた時期:2007年1月
・はじめた理由:i-VoCEのコンテンツとして
・制作を担当したのは:外部の制作会社
・何か手ごたえはありましたか?:雑誌と連動のトライアルとしてうまくいったという手ごたえはあります。
- 投稿者 Blog on Business 編集部
- 22:47
- カテゴリー Movable Type
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