全国28カ所のダイワロイヤルホテルズをはじめリゾート施設の運営を手がける大和リゾート株式会社。同社は、お客様とのエンゲージメント強化を目的に、各ホテルのブログを、ビジネス向けブログサービス「Lekumo(ルクモ)ビジネスブログ」を用いて構築し、積極的な情報発信を続けている。ブログ開設の経緯や効果について、同社営業本部 宿泊事業部 WEB企画室の瀬尾祐一郎氏にお話を伺った。

フォーマルな公式サイトに加え、より“カジュアル”な情報発信の場として
各ホテルの公式ブログ開設は、2012年10月の予約サイト(公式サイト)のリニューアルが契機となった。公式サイトにはエンタープライズ向けのハイエンドCMSが導入され、各ホテルで季節性のあるフェアなどの限定情報を更新できる仕組みが整備された。
「リニューアルから半年ほどして、ホテルのWeb担当者からの要望として、『もっと気軽に、カジュアルな情報を更新できるブログを開設したい』という要望があがってきました」(瀬尾さん)
これまで、各ホテルでは、公式サイトのほかにも「じゃらんnet」などの外部の予約サイト向けに情報を更新していた。これは、予約サイトにおける集客(情報更新頻度が高いほど、お客様に見つけてもらいやすくなる)を目的とした、いわば営業戦略上必要な施策で、現在も取り組んでいるものだ。
「自分たちのドメインで、外部の予約サイトと近い感覚で情報発信できる場を作ろうと考えました。公式サイトはホテルにとってフォーマルな情報発信の場。これに対し、もう少しくだけた情報発信の場としてブログはできないのかというのがスタートでした」(瀬尾さん)
こうして、ブログのシステムを探し始めたのが2013年春ごろのことだ。
企業ブログのシステムとしての信頼性の高さ、価格、カスタマイズ性が決め手
ブログシステムは、上述した公式サイトリニューアルを手がけた制作会社の紹介で、Lekumoビジネスブログを検討、採用した。
「一般のコンシューマー向けブログサービスを使うことも検討しましたが、企業ブログとして使うため、BtoB向けのサービスを利用したかったというのがあります。リニューアルに追加する施策ということでコストパフォーマンスに優れている点、そして、Lekumoを手がけるシックス・アパートはMovable Typeを開発している会社ということで、信頼性の高さも決め手となりました」(瀬尾さん)
また、全国に28あるホテルの数だけライセンスを用意する必要から、柔軟なライセンス体系とカスタマイズ性も判断のポイントとなった。
「独自ドメインを取得し、各ホテルごとにサブドメインを割り当てて運用したいと考えました」(瀬尾さん)
2013年春に製品選定を行い、採用を決め、すぐに導入を開始した。導入は「アカウントを発行し、更新体制が整った6ホテルから開始し、2014年の年末ごろにかけて順次導入した」という。
「公式サイトのリニューアル直後ということで、ブログのデザインは公式サイトに近いテイストとしました。制作会社に基本的なデザインテンプレートを設計してもらいホテル側の準備が整い次第、すぐに開始できるようにしました」(瀬尾さん)
各ホテルでのブログ運用が軌道に乗った2016年春からは、本社側でもLekumoのアカウントを用い、オウンドメディアを開始した。「THE DAIWA RESORT MAGAZINE」と題し、コンテンツマーケティングの実践を目的に、各ホテルのブログで紹介されたグルメや観光情報などを再構成して紹介、検索サイトから各ホテルへの導線としての役割を果たしている。
「こちらのサイトは、HTML知識のある社内の人間が内製で構築しました。コンテンツの運用も、検索からの集客を意識して、SEOに配慮したキーワード選定を行っています」(瀬尾さん)
SNSも効果的に活用し、エンゲージメント強化に取り組む
Lekumoビジネスブログの導入効果は、更新性の高さが挙げられる。
「更新にHTMLの知識が必要なく、ものを書く機会の多かった各ホテルのWeb担当者が、記事を書いて、それを直感的な操作で投稿、更新できるので、これまでWebページを1ページ制作するのにかかっていた手間や時間が大幅に削減されました。また、更新した結果として、お客様の反応も目に見えるので、ポジディブな気持ちで情報発信に取り組んでもらう意味でも効果がありました」(瀬尾さん)
反響が高かった記事は、たとえば、八ヶ岳ロイヤルホテルにある天体望遠鏡から見える星空の話題などで、「天体に関するニュースがあるときなどは、関心を高く読んでもらい、それが固定読者の獲得につながっている」傾向があるそうだ。
「ブログは、集客を直接の目的にしているわけではありません。しかし、アクセス数を見ると、必ずしもホテルの規模や、周辺の観光スポットなどの立地とは比例しないことが分かります。やはり、お客様にとって面白い、役に立つ記事を公開すると固定読者の獲得につながりやすい傾向があると思います」(瀬尾さん)
こうした記事そのものの「質」に加え、Facebook、TwitterといったSNSなどを活用しながら記事の拡散、読者とのエンゲージメント強化に取り組むホテルはPVの数値が高い傾向があるという。
各ホテルのSNSの運用は、基本的に自由に行えるよう、事前に本社の承認を得て、投稿ガイドライン等をWEB事業部が提示している。
「写真を使った方がいいとか、コンテンツ更新についての注意点などをアドバイスしています。このほかにも、ブログを含めたWeb全体でのコンテンツ制作、更新に関するアドバイスについて、随時、研修会などを通じて各ホテルのWeb担当者に知見を共有しています」(瀬尾さん)
特に、投稿内容に応じた写真の効果的な使い方や、外部の予約サイトとブログを並立して運用する場合の「コピーコンテンツ」の問題など、基本的なWebリテラシーやSEOの知識などの底上げを図ることがWEB事業部の役割だと瀬尾氏は述べる。
また、機能面では、アカウント権限を切り分け、簡易的な公開ワークフローを設定した。
「それまでは、全部のアカウントに投稿者権限を付与していたため、書き手がすぐに公開するという運用でした。これを、コンテンツの書き手の権限をゲスト投稿者に設定し、上長などに共同オーナー権限を付与、ホテル内部で、内容を承認して公開する体制としました」(瀬尾さん)
書き手の自由を保ち、公開までのスピード感を損なわないように、コンテンツのダブルチェックを行えるような体制も、Lekumoビジネスブログであれば柔軟に設定できるということだ。
各ホテルにおけるWeb活用のスキルアップをサポートしていきたい
今後はコンテンツマーケティングがさらに重要視され、ブログ更新によって各ホテルの公式サイトへの検索流入を増やしたいというように、徐々にホテル側の意識も変わってきているそうだ。
「ブログの情報発信の目的は、お客様との接触機会における『おもてなし』にあります。これはコンテンツ制作上の注意点として、自分たちの言いたいことだけを伝えることのないように、各ホテルに案内しているところです。自由さを守りつつ、できるだけお客様のためになる情報を提供していくことが大事だと思っています」(瀬尾さん)
ブログ更新にある程度のノウハウが蓄積したホテルは、それをさらに発展させ、SEOを意識したキーワード選定など、コンテンツマーケティングの領域にまで高度化させていくことが目標だ。
「ホテルの現場の担当者には、コンテンツを活用したWebマーケティングのノウハウをスキルアップしていって欲しいですし、本社はそれをサポートしていきたいです」(瀬尾さん)
Lekumoビジネスブログに対しては、こうしたブログやコンテンツマーケティングを取り巻く時流に今後もいち早く対応していくことを期待している。
「Googleのモバイルファーストインデックスなどもありますし、モバイルをより重視する傾向をフォローするような機能改善を続けていただけると、今後もプラットフォームとして末永く利用できると考えます」(瀬尾さん)
ダイワロイヤルホテルズのお客様とのエンゲージメント強化に、各ホテルのブログが果たすべき役割はますます大きくなるに違いない。
大和リゾート 瀬尾祐一郎さん
事例データ
- Lekumoビジネスブログ
- ブログを立ち上げたのは:2013年5月
- ブログを立ち上げた理由:
各ホテルのお客様に対する、予約から宿泊までのリードタイムにおける関係強化を目的に - Lekumoビジネスブログ導入の理由:
カスタマイズ性、信頼性、コストパフォーマンスの高さが決め手 - どのような手ごたえがありましたか?:
HTMLの知識がなくても直感的な操作で情報を更新できるようになった。また、お客様の反応も目に見えるため、ポジディブな気持ちで情報発信に取り組めている