報知新聞社では、スポーツや芸能などのニュースを掲載するニュースサイト「スポーツ報知」を運営している。そのコンテンツのひとつとして、Lekumo ビジネスブログ を使った「ブログ報知」コーナーがあり、登山家や新聞記者による速報性溢れるコラム記事が提供されている。

現場からの声をブログで届ける
ブログ報知の管理業務をおこなっているのは、報知新聞東京本社メディア戦略局の田中孝憲さん。
「現在、サイトには15種類のブログがあります。2007年に登山家の竹内洋岳さんが公式ブログ『14 PROJECT』を開設して以来、徐々に増えて今の数になりました。また、期間限定のブログもあります。例えば、オリンピックの時期に、取材に行く記者のブログを開設し、現地から競技の舞台裏をレポートしました。それら新規のブログ開設や、日々の運営・管理業務が私の役割です。」(田中さん)
日本を代表する登山家・竹内洋岳さんの公式ブログ「14 PROJECT」トップページ

ブログによって更新スタイルは違うそうだ。ブロガー本人が更新するものもあれば、メールで原稿をもらい、メディア戦略局でアップする場合もある。だが、投稿内容について編集部が関与することはないという。
「私たちは保守周りの担当だけで、内容についてはノータッチで本人に任せています。コメント欄を開放しているブログもありますが、問題のあるコメントが付くことはほとんどないので、そこで手間がかかるようなこともありません」(田中さん)
システムは、SaaS(ASP)型のブログサービス Lekumo ビジネスブログを使用している。自社インフラのサーバー内にブログシステムを構築しなかった理由はどこにあるのだろうか。
「スポーツ報知のサイトを運営している CMS(コンテンツ管理システム)に、ブログの機能がなかったというのが最大の理由です。もうひとつはセキュリティ上の制約も大きいですね。基本的に社外のネットワークからは記事が更新できない仕組みになっているので、記者が取材現場で記事を書いて本サイトにアップするということができないんです」(田中さん)
ブログ報知には、競艇や競馬情報など、現場のナマの情報をアップしているコンテンツがいくつもある。速報性を活かすには、本体のウェブサイトとは別に、独立したブログシステムを持つ必要があったというわけだ。
「Lekumo ビジネスブログは、ドメインマッピングによって独自ドメインで公開できるのがいいところです。自社コンテンツとしてアピールしやすいですから」(田中さん)
ブログと本サイトとの連携も実現されている。スポーツ報知のトップページには最新の更新情報を載せる「トップ記事」というスペースがあるが、そこにブログの更新情報が自動的に掲載されるようになっている。
「ブログの方で吐き出したRSSフィードを利用して、最新ブログ2本の見出しとリンクをトップページに掲載して誘導しています。自動化されているので、運用者の負担がないのはありがたいです」(田中さん)
実際に、ブログへの流入経路はトップページのリンクからが多いそうだ。
スポーツ報知のトップページ
「トップ記事」スペースには最新ブログ記事2本が RSS 経由で自動表示される。
臨場感溢れる山岳ブログ「14 PROJECT」
「14 PROJECT」は、ブログ報知の中でもやや異色のコンテンツだ。世界に14座ある8000メートル級の山の完全登頂を目指す登山家・竹内洋岳さんのオフィシャルブログで、臨場感溢れるレポートが話題を呼んでいる。2011年9月にはヒマラヤのチョー・オユー登頂の様子を現地から刻々と伝えた。
「現地にパソコンと衛星電話を持って行ってもらい、そこから日本に送られたメールを代行してアップロードしています。山頂から竹内さんに電話をもらい、その音声も掲載しました」(田中さん)
登頂の様子は、過去の記事から見ることができる。刻一刻と変わる気象条件のなか、無事に登頂を果たす様子は感動的だ。
「以前、雪崩に巻き込まれて背中にボルトを入れるほどの大怪我を負ったこともありますが、入院中の様子を後日アップしました」(田中さん)
ブログからは危険と隣り合わせにある登山の側面が伝わってくる。なお、2012年5月下旬ごろ、最後の1つとなったダウラギリ登頂の様子を報告する予定だ。
「今回も GPS を携帯して、Google Earth 上に登頂ルートを表示させ、ブログ上に載せる計画を立てています。常にその時点での最新の技術を取り入れて、リアルに現地情報を伝えていきたいと思っています」 (田中さん)
目標達成の記念すべき瞬間を伝える貴重なブログとして、注目を集めそうだ。
「14 PROJECT」に掲載されている超高度登山の記録
いままでに踏破した山の記録がいつでも閲覧できるようになっており、日本山岳史がほこるアーカイブの数々にただただ圧倒されるばかりだ。
1日4万PV、月間120万PVを集める人気の競馬ブログ「現場発!POGブログ」
「POG」とはペーパーオーナーゲームの略で、2歳馬を数頭選んで仮想馬主となり、馬の1年間の成績を競うゲームだ。「現場発!POGブログ」は、そのPOGファンを対象にした競馬情報を届けている。ブログの記事を執筆しているのは、報知新聞の競馬記者・内尾篤嗣さんと山本武志さん。ブログ開設当時は1日あたりのPVは300程度だったが、今では1日4万PV、月間120PVを超える人気ブログへと成長した。その秘訣は情報の鮮度の良さと、更新頻度の高さにある。
「ナマの情報を重視しているので、取材をしたらその場でアップしています。週の半ばは栗東トレーニングセンターで取材しているので、その場でまず新聞の記事を書いて、こぼれた情報をブログにアップします。だいたい午後3時か4時くらいに更新しているんですが、たぶん競馬関係のサイトの中で最も早く更新されていると思いますね」(山本さん)
ブログに載せるのは新聞からこぼれたネタというが、そもそも2歳馬~3歳馬の詳細な情報が新聞紙上に載ることは少ないので、ネタは豊富にある。
「未勝利馬の次走情報など、新聞では取り上げない内容にも需要があります」(内尾さん)
更新頻度にも気を遣っている。
「僕は競馬場で書いたり、家に帰ってから夜ちょっと書いたりしていますね。夜書いた分は予約投稿機能で公開時間をセットして更新したりもしています。せっかくページを開いていただけるのなら、何かしら毎日上げておきたいと思って、ネタをストックしてます──決して無理に一つのネタを引き伸ばしているわけではありませんけど、去年は年間の目標更新回数を300回に設定してやってました。今年は1〜2月で42回しか更新できてなかったので、4月までには100に戻そうとか考えて。実際トータル312回更新しました」(内尾さん)
「POGブログ」で目に付くのが、コメント欄での活発な交流だ。ほぼすべての記事に、毎日のようにコメントがあり、10件を超えることも少なくない。付いたコメントには1つ1つ記者からの返答がおこなわれている。
「一度本文に、気になっている馬があったら取材しますよって書いたら、いろんな馬の名前が上がるようになって、それからどんどんこういう情報がほしいというコメントが付くようになりましたね。最初に返事を書くスタンスで始めた以上、途中で締切るわけにもいかないので全部応えるのはちょっとたいへんですが(笑) でもそのおかげで読者のニーズもわかるし、外で読者の方から声をかけられることもあったりして、ありがたいです」(山本さん)
「コメントで依頼を受けての取材で、厩舎とのつきあいが深まったことも多々あります。情報も精度が増して、穴馬をたくさん見つけられるようにもなりました」(内尾さん)
普段、新聞の読者から感想が来ることは少ない。そのフィードバックがブログを続けるモチベーションにもなっている。
「家族に不幸があって更新がとまったときには、みんなが心配してくれて、たくさんのコメントをいただきました。あのときはすごい力になりましたね。いまでも感謝しています」(山本さん)
年間を通じて多少アクセス数の増減はあるものの、ほぼ安定して読者を獲得できている秘訣はどこにあるのだろう。
「POGそのものがネットに向いているということはありますね。5~6月ごろのデビュー間近の馬の情報など、新聞には絶対載りませんが、そこがPOGでは重要なんです。POGの馬を選ぶドラフトは5月頃に開催され、参考資料になる書籍も販売されます。でも、その後の馬の状態とか、調教師のコメントとかはネットでしかカバーできません。また、POGでは1年ごとに取り扱う馬の世代が変わるので、取材対象が変化するため、常に新鮮な情報を提供できるのもいいんでしょうね」(山本さん)
テーマの選び方が正しかったのに加え、更新内容と頻度ともに読者のニーズに応えていることが、人気ブログへと育ってきた理由だと言える。
「普段紙面で取り上げない馬も取材するので、取材の幅や人脈が広がったのもいいところだと思います」(内尾さん)
本来の競馬紙面の取材にもよい影響を及ぼしているようだ。
今後の展開
公式ツイッターアカウントを運用しているブログもあり、記事の更新通知には Lekumo ビジネスブログに搭載されているクロスポスト機能を活用するなど、ソーシャルメディアへの取り組みにも積極的だ。
現在は読者との相性をみながらの試行段階ということだが、ブログによっては Zenback BIZ ウィジェットを設置することで、コメント欄とは違ったかたちでのフィードバックを記事内に可視化させている。
そしてアクセスログを見ると、スマートホンからのアクセスが急増しているという。
「一昨年まではほとんどいなかったのですが、昨年すごく伸びましたね。今までは特にスマートホン専用のページは用意していなかったのですが、今後 Lekumo ビジネスブログではスマートホン用に最適化したページが標準で作られるということなので、すごく期待しています」(田中さん)
システム更新などの手間をかけずに、最新の機能を取り入れた拡張ができるのは、SaaS(ASP)型のブログサービスならではのメリットだ。時流に即した情報を、読者のニーズに応じて提供していくのは新聞社の使命。Lekumo ビジネスブログはそのよいパートナーとなるだろう。
写真左から報知新聞東京本社メディア戦略局・田中孝憲さん、報知新聞大阪本社編集局・山本武志さん、報知新聞大阪本社編集局・内尾篤嗣さん
報知新聞社が運営する公式ブログサイト
事例データ
- 採用したブログシステム: Lekumo ビジネスブログ
- サイトを公開した時期:2007年3月
- 制作を担当したのは:社内ウェブ制作チーム
- 導入理由:本サイトでは開設できなかったブログを導入するため
- どのような手ごたえがあったか:新聞だけではリーチできなかった多くの読者を獲得した