プレスリリース

シックス・アパートのプレスリリースです。

インタビュー「ウェブログのビジネスは、すでに本格化している」(ミナ・トロット(Mena Trott)、米シックス・アパート CEO兼共同創業者)

Movable Type(ムーバブル・タイプ)を開発したきっかけは何ですか?

mt-logo-small.gif従来のウェブログ・ツールやサービスにあまり満足していなかったので、2001年の秋にMovable Type(TM)の開発を始めました。私たちはCMS(コンテンツ管理システム)の開発経験がありましたし、私はアクティブなブロッガー(weblogger)でもありましたから、もし(新しいブログ・)ツールを作って2・3人の友人に使ってもらったら、楽しいだろうなと思っていました。この「2・3人の友人」が「何万ものユーザー」になり、Movable Typeもポピュラーになったので、私たちは自分たちの会社である「Six Apart」を設立しました*1

ウェブログの市場規模をどう捉えていますか?

具体的な数字は分かりませんが、ブロッガーはすさまじい勢いで増えています。ただ、これからのブロッガーは、きっと今までのブロッガーとは違うタイプの人たちになると思います。毎日のように、すさまじい数の人たちが(ウェブログの世界に)入ってきますが、彼らはあまり技術志向ではありません。むしろ家族や友人といったものを大事にしています。彼らがウェブログをするのも、親しい友人や家族たちへの近況報告のためで、何千何万という読者に向かって情報発信するためではないようです。

ウェブログは個人的な日記を飛び越えて、ビジネス・パートナー同士やプロジェクト・チーム内のコラボレーション・ツールなど、ビジネスの場でも主役となる可能性はありますか?

menapic.jpgええ、そう思います。ビジネス利用されているMovable Typeやウェブログは、すでにたくさん存在しています。ウェブログはコミュニケーションやコラボレーションのツールとして、ワークグループ内で使われています。例えばグループ・メンバー同士がお互いの仕事内容について情報交換するというとき、ウェブログを使えば簡単で効率的です。ウェブログを個人的なコミュニケーションに使っている従業員が、「ウェブログを使えば、職場の同僚とのコミュニケーションにも使える」と気付いて、職場にウェブログ(MTであることが多いです)を導入するということもよく起きています。

ビジネスへの展開があるとすれば、具体的にどんな事例が想定されますか。Six Apartはビジネス用途向きのサービスや新機能を考えていますか

一つの例は、さっきご説明したような、職場でのコラボレーション・ツールです。私たちはMTの次期版や、商用利用向けに機能拡張した「Movable Type Pro」で、ユーザー管理機能を強化して、複数のユーザーが手軽にウェブログを共有できるようにしていくつもりです。さらに、もっと拡張性のある認証システムを組み込んで、ビジネス・ユーザーがLDAPなど既存のディレクトリ・システムと連携できるようにする予定です。

もう一つの可能性は、MTをオンライン・メディアのためのプラットフォームにするというものです。オンライン・マガジンや出版社がウェブに記事を掲載する仕組みとしてMTを使うというものです。例えば、米アバウト・ドットコム(About.com)は最近、全社の記事システムをMTに移行させました。何百人ものガイド(About.comは著者を「ガイド」と呼ぶ)が作成した記事は、すべてMTを使って掲載されているのです。こうしたユーザーのために組み込んでいる新機能の一つが、ワークフローの自動化機能です。この機能を使えば、下書きや査読・校正、実際の掲載処理などを自動化できます*2

TypePadをつくったきっかけは? どうして有料化したのでしょうか?

typepad-logo.gifTypePadを作ろうと思ったののは、サーバーを探したりアプリケーションをインストールしたりせずにMTを使いたい、というまったく新しいタイプのユーザーが増えてきたからです。こうしたユーザーは、従来のMTユーザーとは異なり、あまり技術志向でありません。そのため、(機能が豊富という定評がある)MTの全機能を、簡単なインタフェースで使えるようにする必要がありました。ホスト集中型のシステムで稼働させるため、多くの機能を一つのソフトに統合しようとも思っていました。

TypePadは信頼性を確保するために、現在は有料サービスとして運営しています。無料で提供されているため、市場の要求にこたえられなくなっているサービスがいくつもあります。信頼性があって手ごろ、というのが私たちがTypePadに期待していることですし、TypePadはその期待にこたえてくれていると思います。

MTは確かに無料ですが、MTを動かすためのホスティング費用には月に10ドルから30ドル程度かかります。ですからTypePadは、ホスティングとウェブログ・アプリケーションの両方に対してお金をいただいていると考えていただければいいと思います。

TypePadの国際展開をどう予定していらっしゃいますか? 特に日本向けのサービスを開始する可能性はありますか? あるとすれば、いつ、どんな形で開始されますか?

もちろん日本への展開を考えています。シックス・アパート社は、米国外の市場を知ることに、多大な労力を割いています。私たちのウェブログ・ソフトウエアは、国際化とローカル化への対応が最もしっかりしているものだと自信を持っています。例えばTypePadは、どんな言語や文字コードにも対応しています。

他の国のブロッガーやインターネット・ユーザーの活動にも、非常に興味を持っています。例えば日本は、米国とは比較にならないぐらい携帯電話の文化が進んでいます。そこでTypePadには、米国では1年ぐらいは使われそうにない(携帯電話対応の)機能を盛り込みました。これは、日本のユーザーのニーズに合わせたものです。

MTは個人ユースでは無償ですが、商業利用は無償ではありません。ライセンス事業に乗り出す計画はありますか?

現バージョンのMTは個人利用や非商用利用、教育利用に関しては無料です。商用利用に関しては、ライセンスは150ドルです*3

たくさんの大企業が、オンライン・メディアのプラットフォームとしてMTを使っています。例えば米アバウト・ドットコム(About.com)は、ガイドのウェブログを作成するためにMTを使っています。ほかにも、米Fast Companyや米InfoWorld?が、MTを使っています。こうした企業はMTを外部への情報提供目的に使っていますが、商用利用している非常に多くの企業は、MTをイントラネットやワークグループに使っています(http://movabletype.org/spotlight-full.shtml)に、MTを使った著名企業のリスト(英文)があります)。(聞き手は関 信浩)

追記: このインタビューは2003年11月15日時点での内容のため、現在の状況とは異なることがあります。あらかじめご注意ください。


*1 Six Apartという名前の由来は、創業者の二人の誕生日が6日離れている=six days apart=ところから来ています


*2 こうした機能を使えば、大企業が「コンプライアンス」のために、社外に出す情報を一括して検査できるようになります。最近の企業では、たとえ一部門がユーザーへの情報提供としてウェブに出す情報場合でも、一つ一つ企業のコンプライアンス部門がチェックすることがありますが、既存のメールやワークフロー・システムを使うと、最終的なウェブへの掲載のために時間がかかってしまいます。ウェブログにワークフロー機能があれば、「承認=ウェブへの掲載」とすることが可能になるわけです(注:現在のバージョンは書き込みだけを制限する機能はありません)


*3 このライセンスは「限定商用ライセンス」といい、利用できる内容には制限があります

page top