広報ブログ

シックス・アパートの広報より、社内のさまざまなトピックをお届けします。

ブログとソーシャルメディアの連携、そして「ソーシャルメディア炎上事件簿」

気づいたらすっかり9月で、ちょっとびっくりしているシックス・アパートの関です。

先日、私の古巣である日経BP社の同期入社の小林記者に取材された内容が、日経デジタルマーケティングの記事として公開されました。

(あわせて小林記者が12年に及ぶ「炎上」取材で得た中から「30の事件」を紹介し、対策についてまとめたものを書籍にした「ソーシャルメディア炎上事件簿」を出版したそうです)

企業がソーシャルメディアを積極的に利用するようになってきましたが、一方で「炎上トラブルがこわい」という企業の方も多く、今回の日経デジタルマーケティングの記事も、そんなマーケッターの方々の不安を受けての記事だったと思います。

シックス・アパートは設立してから一貫してブログやソーシャルメディアを活用しており、その中には社員のソーシャルメディアも含まれています。ソーシャルメディアを利用していく上で、企業としてのリスク軽減だけでなく、社員のリスク軽減も考えたうえで、昨年7月にはソーシャルメディアの企業公式アカウントの運用方針を発表し、あわせて社員のソーシャルメディア利用ガイドラインをCreativeCommonsライセンスで公開するなど、最新の状況に対応しようとしています。

さて、こんなことを書くと「まだソーシャルメディアで失敗や炎上を経験していないから続けられるのでは?」というご意見もいただきます。確かに尾を引いたものはなかったのですが、では失敗や炎上を経験していないかというと、そうでもないと思います。

初めての「炎上」

忘れもしない、初めての炎上は、2004年5月に、Movable Typeの当時の最新バージョンである3.0をアナウンスしたときです。それまでも商用利用は有償と明示していたものの、多くのMovable Typeユーザーは「Movable Type=無料」を信じていました。そこに「Movable Type 3.0のライセンス価格」を発表したものですから、非難とブーイングの嵐。当時、一晩でトラックバックが500件以上つくなど、とんでもない数のフィードバックに、創業者とはいえ当時26歳のシャイなMena Trottは、泣きながら徹夜でコメントやトラックバックを1件1件読んでいたことを覚えています(アナウンスを当時CEOだったMena Trottの名前で実施したため)。

その後は、少し冷静になったシックス・アパート側と、対話に応じるユーザーの間で、ブログやコメントを通じて少しずつ対話が進み、その約1週間後には、ユーザーの意見を取り入れた、改定版のライセンス体系を発表することができました。

当時は日米あわせて社員は20人程度しかおらず、この事件の1年後にMenaを引き継いだ当時のCEOと「あの事件をちゃんと対応できなかったら、会社はすぐにつぶれてしまっただろうな」と飲みながら話したぐらいです。

Twitterでプチ炎上

最初の炎上は主に米国での話ですが、日本でも何度か、いわゆる「プチ炎上」に巻き込まれたことがあります。どちらもTwitter絡みです。

一つ目は2009年の夏。ちょうどTwitterが流行りだして、マスメディアでも取り上げられ始めた頃です。ちょうどテレビ東京のニュース番組ワールドビジネスサテライト(WBS)がTwitterの特集を検討していて、実際に使っているユーザーが多い企業ということでシックス・アパートも取材を受けました。さらに私が個人的に開催した「リアル ツイ飲み」(Twitterでのバーチャル飲み会をリアルにやってみるイベント)に取材クルーの方をお招きしたところ、その両方の様子がWBSで放映されました。

ただ実際の放映では、どんな形に編集されて出てくるか分かりません。そこで放映時刻の直前にブログを公開し、私の視点から見た、今回の取材の内容を説明しておきました(放映より前だとネタバレになってしまいますし、放映後だと内容によっては「苦し紛れの言い訳」になってしまう可能性があるため、放映時刻直前を選びました)。

番組は概ねTwitterに好意的な内容で、映像表現などでも特段、問題は見つからなかったように記憶しています(私から見て)。ただ、当時はTwitterは「ミニブログ」と紹介されていましたので、一部の方からは「ブログの競合であるミニブログの製品のプロモーションをやるとはどういうことだ」というご批判をいただいたりしました。

そこで私個人としての考え方だけでなく、シックス・アパートという会社としてソーシャルメディアをどう見ているのか、という内容を、広報ブログに掲載し、あわせてTwitterを経由していろいろな方にお知らせし、こうした疑問や批判に答えることで、この問題は徐々に解決していきました。

マスメディアとソーシャルメディアの「流儀」の違い

もう一つは2009年の秋。これは、私が個人的に応募したミシュランガイド東京2010の記者発表会で、ミシュランタイヤが「Twitter記者」を公募していて、それに私が選ばれたことに端を発します。当日はTwitter記者がミシュランガイドの公式Twitterで中継をする、という運用だったことが、後日のミシュランガイドの公式アカウントを運用していたミシュランタイヤ広報部の対応をキッカケに炎上してしまいました。

ミシュランタイヤの方からは、謝罪とともに公式アカウントを閉じたい、というお話をお伺いしましたので、乗りかかった船ということで、騒動の経緯や運用の問題点をブログで説明し、Twitterで関心をもっていた方々にご説明しました。

こちらも事の経緯をまとめた長い記事ですが、最後のパラグラフに結論らしきことを書いていますので、そこをあわせて引用しておきます。

ミシュランガイド東京2010、Twitter実況中継の舞台裏とソーシャルメディア(私の個人ブログ)

マスコミや一般報道、広報などは、明に暗に「無謬性(間違いがないこと)」を求められます。また後からリファレンスをとられてしまうので、事実誤認があった場合には、訂正を出すか出さないかだけで、大きな問題(争い)になることさえあります。ですので、Twitter中継の中でのミスは、インターネットで公開されている以上、修正するか訂正するのが当然、という意識を、ミシュラン広報の方が持つのは、ある意味、誠実な対応だったはずです。

ただ次の二つの原因により、誠実と思われた対応が、逆にTwitterユーザーの怒りを生む結果になったと思います。

  • 同じアカウントを、異なる人が利用した。一方が言った内容を、もう一方が訂正した
  • Twitterはマスコミではなく、「笑って流すミス」が存在する、一般ユーザーのコミュニケーションの場だった

今回ミシュラン広報は、ふつうであれば削除してしまったであろう、批判を受けたつぶやきをそのままインターネット上に残しています。これは、きっと今回の騒動から目をそらさず、むしろ学んでいこうという姿勢を示しているのではないかと思います。

新しいメディアは使って体得していくしかない

もともとこのエントリーは、先週の木曜日(9月1日)に開催された「ソーシャルストリーム全盛時代だからこそ見直すブログ術&一歩踏み出すマキコミ術」にパネリストとして登壇するにあたって、ブログ記事を書いておこうと思ったことに端を発しています。会場で「最近ブログ書いてませんね」と言われるのを防ぐためです(笑)。実際には記事が長くなりすぎて週明けになってしまいました(苦笑)。

先日、アイティメディアが開催した勉強会で「ソーシャルメディア・マーケティングの最前線」というタイトルで講演を依頼されたときに、一番多く受けた質問が「どうやったらソーシャルメディアを利用することを会社に説得できるか」でした。そういう企業の多くは、そもそもソーシャルメディアへのアクセスを禁止しているところがほとんどですが、実際にはスマートフォンの普及により、少なくない社員の方々がソーシャルメディアを利用しています。

「ソーシャル」メディアというぐらいですから、人と人との付き合いが基本です。子供に社会性を身に付けてもらいたい親は、保育園や幼稚園に入れて実際に体験して身に付けてもらうのか、それとも座学で「人との付き合い方」を教えて頭で考えながら身に付けてもらうのか、どちらを選ぶでしょうか?

ブログとソーシャルメディアを使っていく上で、すべてが順風満帆で進むことはありません。人間の一生が順風満帆ではないのと同じです。

ソーシャルメディアと付き合うには、人間関係のアツレキ(=炎上)を実際に経験して習得していくしかないと私は考えます。そして「一度ソーシャルメディアで炎上してしまったら二度と使えないから慎重にならざるを得ない」という声も聞きますが、冒頭で書いたように炎上しても、粘り強く対応していくことで次は開けると信じています。

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