GMOホスティング&セキュリティ『ラピッドサイト』
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GMOインターネットグループに属するGMOホスティング&セキュリティは、2004年の9月から同社の法人向けホスティングプラン「ラピッドサイト」にて、Movable Typeのプリインストールを開始した。2005年に入ってからは、ほぼ全ホスティングプランにまで拡大、同社がMovable Typeのプリインストールを開始した背景には、いったいどういう狙いがあったのだろうか。GMOホスティング&セキュリティ、ラピッドサイト事業部の事業部長の大澤貴行さんと、梅原誠さんに話を伺った。
■Webサイトは二極化している
「ラピッドサイトがMovable Typeをプリインストールした理由の一つは、他社ホスティングサービスとの差別化です」(大澤さん)
ホスティング業界は常に激しい競争に晒されており、どこの業者も料金を下げる方向に向かっている。しかし、利益率を上げるためには過度に価格を下げるのは好ましくない。価格を維持するためにどうすれば良いか。それは、付加価値を付けて他社と差別化することだったという。
そして、もう一つの理由は顧客側の抱える事情にあるという。大澤さんによれば、サイト構築費用を持っている顧客と、そうでない顧客とでは、サイトの質に歴然とした差があるという。
「それが一番顕著に表われているのは、弊社ユーザーさんが辞める理由なんです。辞める理由の大半がWeb閉鎖なんですね。Webサイトそのものを止めてしまうんです。」(大澤さん)
費用をかけていないサイトはユーザビリティやデザイン面で大手サイトに劣り、客を十分につかめず効果が出ないため、サイト自体を止めてしまうという。構築費用で劣るユーザーはどうすれば大手に対抗できるのか? その解答がMovable Typeだったという。
「お金をかけたところに引けを取らないようなWebサイトを作る必要性というのが、いまもの凄くあると思うんですよ。ではどうするのかとなったときに出てきたのが、CMS(コンテンツマネジメントシステム)だったんです。」(大澤さん)
ラピッドサイトが現在プリインストールしているCMSは、Movable Type、ショッピングサイト用のosCommerce、コミュニティサイト用のXoopsの3つ。この中で、最も汎用性があり、完成度が高いのがMovable Typeだという。
「私自身は、Movable Typeをブログソフトというよりは、優秀なCMSソフトであると考えています。もちろんブログとして使っていただいてもかまわないですが、ラピッドサイトに採用したのはCMSとしての機能が優れていたからです。」(大澤さん)
CMSというと、大企業向けの数億円するものから、中小企業向けの数百万円クラスのものがあるが、大澤さんによれば、Movable Typeは廉価ながらも数百万クラスのCMSに引けを取らないと考えているという。
■Movable Typeコンテスト開催! その狙いとは?
GMOホスティング&セキュリティは、2005年の6月に日本で初のMovable Typeコンテストを開催した。これは、Movable Typeで構築したサイトを対象とした、優れたサイトを表彰するコンテストだ。特定のCMSを対象としたコンテストはおそらくは世界でも類がないだろう。応募総数は315サイトにも上り、趣味で使っているユーザーから、サイト構築業者まで、多彩な応募があった。梅原さんによると、上位に入賞したサイトはどれも共通の特徴があるという。
「入賞しているサイトはどれもCMS的な使い方をしているものですね。」(梅原さん)
Movable Typeといえば、世間ではまだ日記を書くためのツールだという認識が強い。しかし、Movable Typeは単なる日記ツール以上の能力がある。GMOホスティング&セキュリティはそう認識している。
「このコンテストを開催したのは、ある意味、ブログ=日記というイメージを打ち砕くためだったようなものですよ。僕は技術者として見て、Movable Typeが凄いものだということを知っている。でも、ユーザーさんには十分に伝わっていないと思ってました。Movable TypeのCMS的な凄さをユーザーさんに伝えるためには、Movable Typeでどれだけ凄いサイトが作れるのかを見てもらうことが一番だと思ったんですよ。」(大澤さん)
そもそも世間ではCMSというもの自体、定義があやふやなこともあり、一般では十分に理解されているとは言えない状況だ。だから、Movable Typeコンテストに応募された315エントリーは、CMS実用例の良いリファレンスになることだろう。
■法人ユーザーの本当の目的は情報発信
ユーザーから見たとき、Movable Typeがプリインストールされているメリットとは何だろうか。一つは支払先が一本化できることにあるという。決済手続が複雑な法人だと、支払先が一つ増えることは、手間が一つ増えることになる。ラピッドサイトであれば、ライセンス料金はGMOホスティング&セキュリティが支払っているため、ユーザーはホスティング料金以外に、直接ライセンス料金を支払わなくて済む。
もう一つの利点、それは更新の手間が軽減されることだ。優れたサイトにとって、頻繁な更新は絶対条件と言っていいだろう。見栄えの良いサイトを作るだけならばHTMLで構築しようが、Movable Typeを使おうが、大きな差はない。問題は、構築後の更新作業だ。
「優れたサイトを作って保守しようとしたときに、HTMLで更新するのは資金的に無理があるんですよ。たとえば、入賞したサイトに幼稚園があったのですが、更新を行なっているのは保母さんたちらしいんです。きっと、その方達はHTMLのことは全然知らないで、ここをクリックして、こうすれば更新できますよと言われてやっていると思うんです。」(大澤さん)
「でも、それで良いと思うんです。法人ユーザーさんたちがやりたいことは情報発信な訳で、サイトをすることではないですから。」(梅原さん)
今後の展開としては、Movable Typeのプリインストールからさらに一歩進んで、有料サポートやマニュアルの充実、ユーザーむけのセミナーなどを展開することを検討しているという。2005年、にわかにビジネスブログと言う言葉が世に広まり、ホスティングサービスの付加価値として認められたのが第1フェーズだとするならば、GMOホスティング&セキュリティはその先を見据えた、第2フェーズに入ろうとしている。
GMOホスティング&セキュリティ ラピッドサイト事業部長の大澤貴行さん