北海道を拠点に地域密着型の金融サービスを提供する北央信用組合。同組合は、金融商品の情報発信にとどまらず、地域の人や取り組み、まちの魅力を伝える場として、オウンドメディア「ほくしん通信」を立ち上げた。営業色を前面に出すのではなく、地域に寄り添う情報を継続的に届けることが、結果として信頼関係の構築につながるとの考えのもと、サイト基盤にはセキュリティと運用性に優れたSaaS型CMS「MovableType.net」を採用。メディア運営を前提としたベーステーマ「Lekumo Media」をベースに構築され、無理なく更新を続けられる体制を整えている。オウンドメディア開設の背景や運用の手応えについて、同組合 総合企画部 執行役員 総合企画部長の川島淳一さんと、サイト構築・保守を担う株式会社インセンブル ディレクターの二階堂智哉さんに話を聞いた。
地域に寄り添った情報を「埋もれさせない」仕組みを模索
北央信用組合がオウンドメディア「ほくしん通信」を構想するに至った背景には、地域密着型金融機関としての情報発信のあり方を見直す動きがあった。川島さんは、金融機関の情報発信について「自分たちの取り組みや考えを正しく伝えることに加え、地域で活動するお客様の情報も発信していきたいという思いがありました」と語る。
同組合では、ホームページ開設後、2017年ごろからFacebookでの情報発信を開始した。日々の活動や地域の話題をタイムリーに届ける手段として、SNSは一定の役割を果たしてきたが、その一方で、運用を続ける中で課題も見えてきたという。「投稿がフィード上に流れてしまい、せっかく発信した内容が、時間とともに埋もれてしまう点に課題を感じていました」(川島さん)。
地域の取り組みや事業者の活動は、時間が経っても価値を失うものではない。そうした情報を一過性の投稿で終わらせず、体系的に整理し、必要な人に届け続ける仕組みがないか、その課題について相談したのが、サイト構築やウェブサイト運用を支援してきたインセンブルだ。二階堂さんは「SNSは拡散力がある一方、ストック性には向きません。地域の魅力や人の情報を蓄積していくには、相応しい“場”が必要だと感じました」と振り返る。
こうしたやり取りを通じて構想されたのが、地域の情報を継続的に蓄積・発信するための「オウンドメディア」の開設である。金融商品や組合からのお知らせを前面に出すのではなく、地域の人や事業、まちの取り組みに焦点を当てる方針について、川島さんは「営業色を出すのではなく、地域に寄り添う情報を届けることが、公共性の高い我々の事業に対する信頼につながると考えました」と説明する。
また、オウンドメディア開設に際してもう一つ、確認されたポイントは「無理なく続けられること」だ。通常業務と並行して運営する性質上、更新負荷が高く、属人化しやすい仕組みは避けなければならない。こうした条件を踏まえ、北央信用組合とインセンブルは、オウンドメディアを支えるサイト基盤について具体的な検討を進めていった。
安心して続けられるメディアを支える基盤として採用されたMovableType.net
オウンドメディアを立ち上げるにあたり、北央信用組合とインセンブルが最も重視したのは、“無理なく続けられる基盤”をどう整えるかという点だった。情報の更新に専門知識が必要な環境では、継続が難しくなる。そこで選ばれたのが、SaaS型CMSの「MovableType.net」である。
二階堂さんは、CMS提案のポイントについて「信用組合という立場を考えると、セキュリティや安定性は大前提でした」と話す。金融機関ならではの厳格なセキュリティ要件について、二階堂さんは「信用組合では、組合内のサーバーにソフトウェアをインストールする運用は基本的に認められていません。かといって外部にサーバーを立て、そこへCMSをインストールするホスティング型の運用についても、セキュリティポリシー上の懸念がありました」と話す。
そこで、選択肢となったのがSaaS型CMSである。「インフラ管理やセキュリティ対策を自前で抱えずに済み、かつ金融機関として安心して使える基盤である点に鑑み、MovableType.netは最も相応しいと考えました」と二階堂さんは説明する。MovableType.netは、CMS本体やサーバーの管理、セキュリティアップデートをサービス側に委ねることができるため、運用者はインフラやセキュリティ対策を意識することなくコンテンツ制作に集中できる。また、Movable TypeのCMSとしての実績や信頼性も、金融機関にとっては大きな安心材料だった。
このように、“使いやすさ”だけでなく、“金融機関のセキュリティポリシーに適合すること” が、MovableType.net選定の大きな決め手となった。
CMSの選定後、続いて検討されたのが「どのような形でメディアを構築するか」という点である。インセンブルが提案したのが、メディア運営を前提に設計されたテーマ「Lekumo Media」をベースにした構築だった。Lekumo Mediaは、記事一覧やカテゴリ構造、回遊導線などがあらかじめ整理されている。インセンブルでは、このベーステーマを活かして制作コストを極力抑えながら、「ほくしん通信」らしさをどう表現するかに注力。金融機関が運営するメディアでありながら、堅くなりすぎず、地域の人が親しみを持って読めるトーンやデザインを意識し、記事が増えていくことを前提に、カテゴリ設計やタグの使い方もシンプルに整理されている。
また、川島さんは構築時に「サイトの名前」の検討には相当の時間をかけたと振り返る。候補は100案近くに及んだということで、最終的に採用されたのが「ほくしん通信」という名前だった。サブキャッチとして掲げた「ほっとする くらしの しんぶん」の頭文字が「ほくしん」とかけられており、川島さんは「“ほくしん”という言葉の響きに、“ほっとする”という意味合いがかかるようにしました」と意図を語る。
インセンブルも、サイトを“作って終わり”にせず、立ち上げ後の保守・運用まで担う立場から、更新のしやすさや記事管理のしやすさを重視して設計を支援した。こうした取り組みを通じて、「ほくしん通信」は具体的に動き出したのである。
現場を巻き込み、無理なく続ける運用面の工夫
「ほくしん通信」のコンテンツ運用体制について、川島さんは「情報収集の役割を担っているのは、実際に地域を回り、事業者や住民と日常的に接している営業店の担当者です」と説明する。「地域の情報を一番持っているのは現場です。だからこそ、営業店を巻き込んだ形で運用したいと考えました」(川島さん)。
一方で、その運用は決して簡単なものではなかった。営業店の担当者にとっては、通常業務との兼務となるからだ。川島さんは、「この材料集めというのが非常に大変でした。日頃の業務の中で、お客様の情報を集めて記事にするというのは、簡単なことではありません」と率直に振り返る。
そこで北央信用組合では、情報を集めた担当者にインセンティブを付与することや、「お客様への訪問は、営業活動の一つのきっかけとなる」という点で各営業店の理解を求めた。単なる追加業務ではなく、地域との関係構築につながる活動として位置づけた点が特徴的だ。
運用フローも明確に整理されている。情報収集や一次的な原稿作成は営業店が担い、最終的な公開は本部で確認したうえで行うという体制を取ることで、情報の正確性やトーンを担保している。現場の自由度と、本部によるチェック機能を両立させた形だ。「現場任せにしすぎず、かといって本部で抱え込みすぎない。そのバランスを意識しました」(川島さん)。
こうした運用を支えているのが、MovableType.netの使いやすさである。記事投稿や更新作業が複雑であれば、現場の負担は一気に増えてしまう。その点、MovableType.net はブラウザー上で操作が完結し、専門知識がなくても扱いやすい。二階堂さんは、「更新作業がシンプルであることは、運用を続けるうえで非常に重要です」と話す。
たとえば、バナー更新は内製化されている。キャンペーンやお知らせ用のバナーについては、行員自身がCMSの管理画面から更新を行なっており、都度インセンブルに依頼する必要はない。こうした“自分たちで触れる範囲”を広げたことが、運用の自走につながっている。
今後も地域との関係を深めるメディアへ
「ほくしん通信」の運用を続ける中で、川島さんは、「数値的な成果を前面に出しているわけではありませんが、確実に“見られている”という実感があります」と手応えを話す。地域の事業者や関係者から「記事を読んだ」「紹介されてうれしかった」と声をかけられる機会も増えたという。
組合内での変化も小さくない。営業店の担当者が情報収集を通じて、これまで以上に地域の事業や人の取り組みに目を向けるようになった。「記事にする前提で話を聞くことで、お客様との会話の質が変わったという声もあります」と川島さんは語る。オウンドメディアは単なる広報ツールではなく、地域理解を深める仕組みとしても機能し始めている。
また、運用を支える基盤として MovableType.netを採用した効果も、日々の業務の中で実感されている。記事更新やバナー差し替えなどを行員自身で完結できるため、スピード感を損なうことがない。セキュリティやインフラを意識せずに運用できる点も、金融機関にとっては評価の高いポイントだ。
「ほくしん通信」の今後の展望について、川島さんは、「公開した情報、コンテンツのメンテナンス」を課題に挙げる。「より多様な地域の声を拾い上げることに加え、公開済みの情報を適切にメンテナンスすることで、サイトの信頼性をさらも高めたい」ということだ。
また、閲覧する人の情報の取得のスタイルが変わっていくことや、SNSとの関わり方が変わっていくことも考え、川島さんは「サイトの来訪する人にとって、今後も役に立つ情報を発信していけるように、インセンブルには今後も継続的なアドバイスやサポートをお願いしたいです」と話す。
「地域に寄り添う情報を、無理なく、長く届け続ける」ための基盤として MovableType.netを採用し、現場を巻き込んだ運用体制を整えた「ほくしん通信」は、北央信用組合と地域をつなぐ重要な接点として、これからも成長を続けていくに違いない。
北央信用組合の川島淳一さん(左)とインセンブルの二階堂智哉さん
事例データ
- サイトURL:https://hokushin-tsushin.jp/
- 使用した製品:MovableType.net
- 制作を担当したのは:株式会社インセンブル
- MovableType.net の利用目的:金融機関の厳格なセキュリティポリシーに対応し、インフラ管理や保守負担を抑え担当者が専門知識なしで更新を継続できるオウンドメディア基盤を構築するため。
- どのような手ごたえがありましたか?:営業店の現場が情報収集に関わる運用体制を整えたことで、地域との接点が広がり、信頼関係づくりにつながるメディアとして育ち始めている。





