山口情報芸術センター(YCAM)がMovable Typeを使う理由

山口情報芸術センター様

さまざまな関連情報を容易に連携させることが可能になり、外部への情報発信、内部スタッフによるサイト活用など、特定の用途に縛られない柔軟性のあるサイトになりました

山口市にある山口情報芸術センター(YCAM:ワイカム)は、2003年の開館以来、メディア・テクノロジーを用いた新しい表現の探求を軸に、展覧会や公演、映画上映、子ども向けのワークショップなど、多彩なイベントを開催するアートセンターだ。ポータルサイトは、YCAMの活動分野の広がりへの対応、および、SNSやモバイルをはじめとする新しい環境に対応すべく、8年ぶりに大規模なリニューアルを実施。今回のリニューアルについて、山口情報芸術センター学芸普及課の渡邉朋也さんと、構築を担当した合同会社アライアンス・ポートの川角友太さんにお話を伺った。

「オープン」と「コラボレーション」のコンセプトのもと、4カ国対応のサイトにリニューアル

2003年に開館したYCAMのサイトは、2007年にアライアンス・ポートがリニューアルを手がけ、「Movable Type」(以下、MT)によりCMS化が行われた。その後、2011年には、デバイスの多様化に伴うTOPページのデザイン刷新や、カレンダー機能の視認性、操作性向上などの比較的小規模なリニューアルを行っている。YCAMの渡邉朋也さんは以下のように語る。

「2007年のリニューアルから8年、2011年のリニューアルからも4年が経過し、その間の時代背景、技術的背景の変化からサイトリニューアルを決断しました」(渡邉さん)

リニューアルの背景には、大きく内部要因、外部要因が挙げられる。内部要因は、主にYCAMの活動の変化に関するものだ。

「YCAMは、インターラボと呼ばれる研究開発チームと、アーティストとの協業による『委嘱作品』を活動の柱としています。この作品の作り方がここ数年、変化してきました。例えば、「Reactor for Awareness in Motion(RAM)」というプロジェクトがあります。これは、ダンスの創作と教育のためのツールを研究開発するプロジェクトで、モーション・キャプチャー・システムの開発やワークショップ、ダンス公演などを行うものです。こうしたプロジェクトでは、作品に使う技術の基礎的なリサーチから、数年単位で活動しています」(渡邉さん)

一般的な美術館の機能は、既存の作品を何らかの視点で展覧会に構成することで企画を実施していくことが多いが、YCAMの活動は作品制作を軸に、ワークショップ開催、ソフトウェア/ハードウェア開発、論文発表などをおこなっており、その活動の幅が従来のアート施設という事業カテゴリーには収まりきらなくなってきたのだ。

一方、外部要因としては、一つにはSNSの台頭をはじめとするテクノロジーの進化が挙げられる。そしてもう一つが、MTを含めた環境の老朽化だ。

導入から8年が経過し、再構築を含め、MTの動作が重くなってきました。そこで、MTのバージョンアップをはじめ、映像、画像などのデジタルアセットの保管、活用方法に至るまで、サイト設計を見直すことにしました」(渡邉さん)

こうした背景のもと、リニューアル計画がスタートした。

管理画面の操作性向上や多言語化への対応も「MT Cloud Starter Kit」のプラグインで自在に

リニューアルに際しては、YCAMのコンセプトの再定義から行った。具体的には、「YCAMについて」というページの拡充である。ここでYCAMのコンセプトや沿革、インターラボの取り組みをしっかり告知していくために、リニューアルに際し、コンテンツ(テキスト)の編集、制作に外部の編集者を招聘している。

「内部のリソースだけでは、コンテンツの客観性を担保できないと考え、YCAMの事業を構造的に理解して表現できる外部の編集者はマストだと考えていました。そこで、『commmons:schola』や『大谷能生のフランス革命』で知られる門松宏明さんにテキストの編集をお願いしました」(渡邉さん)

サイトのページ構造として特徴的なのは、情報の「縦軸」と「横軸」をきちんと構造化した点だ。

「例えば、先述した『RAM』のページでは、派生するイベントや、ソフトウェア等の成果物、プロジェクトチームの紹介など、関連性のある情報(横のつながり)と、プロジェクトを深く知る情報(縦のつながり)を可視化しています。かつては展覧会単体の情報だけを掲載すればよかったのですが、今は、展覧会の背景にある研究開発プロジェクトといった派生する様々な情報を紹介する必要があるからです」(渡邉さん)

プロジェクトメンバーは、外部から招聘する場合も、内部(YCAMインターラボ)のスタッフの場合もある。こうした人物紹介のテキストまですべて書き下ろしという徹底ぶりだ。

一方、機能面での特徴は、プラグインの導入によるMTの管理画面のカスタマイズだ。構築を担当したアライアンス・ポートの川角友太さんは以下のように語る。

「今回、管理画面のカスタマイズには、各種プラグインを導入しています。これらは、『MT Cloud Starter Kit』というプラグインパッケージからセレクトされたものです」(川角さん)

「MT Cloud Starter Kit」は、アライアンス・ポートをはじめとするMTベンダー4社が開発した11のプラグインがパッケージになったもので、MTのサイト制作をより柔軟に行うことが可能になる。

「今回は、管理画面周りでは『MTAppjQuery』(入力欄をカスタマイズするプラグイン)『UploadDir』(アセットの拡張子ごとに自動的にディレクトリを整理できるプラグイン)などを『MT Cloud Starter Kit』から導入し、よりリッチに、使いやすくカスタマイズしました」(川角さん)

さらに、サイトの多言語化にあわせて、同社が開発した「Multilabel」というプラグインも導入されている。これは、ページ内に頻出する「定型的な言い回しの」キーワードを、MTタグで自動的に他の言語に変換してくれる“辞書ツール”のようなプラグインだ。

「例えば、映画上映のページでは、日英中韓の4言語でほぼ同じレベルの情報が掲載されています。『9月7日』という日付の表記や、日本語の『開館日』に相当する言い回しなど、国ごとに違うものの、定型化されたキーワードがあります。そうしたキーワードを、タグを埋め込むだけで、自動的に4カ国の言語に変換してくれます」(川角さん)

ycam03.png

Multilabelプラグインにより、定型ワードが日英中韓の4言語に自動変換される

展覧会などのイベント情報は細かいキーワードが多く、こうした変換ツールはページ作成の効率化に役立っている。

さらに、サイトのデザイン面では、YCAMの「オープンな取り組み」というコンセプトを表現するため、ページのフォントにまでこだわっている。

「グローバルナビや、ページのH1要素など、ページやコンテンツの重要な部分の書体に、Source Han Sans(源ノ角ゴシック)というAdobeとGoogleが共同で開発したオープンソースのWebフォントを使いました。YCAMのオープンな姿勢というメッセージを、オープンソースのWebフォントによって表現できると考えました」(川角さん)

アクセス数、滞在時間の向上だけでなく「コンセプトの担い手はあくまで人」というメッセージが発信できた

リニューアル後のサイトは2015年8月11日に公開された。リニューアルによる効果について、渡邉さんは以下のように語る。

「アクセス解析の結果を見ると、前年の同時期に比べてアクセス数が増加しているのはもちろんですが、とりわけ滞在時間が1.5倍から2倍に増えているのは注目に値すると考えています。特に現状では、これまでのポータルサイトには無かったコンテンツ、つまりYCAMや、インターラボについてのページへのアクセスが多いようです。」(渡邉さん)

プラグイン導入等による更新性向上についてはどうだろうか。

「再構築にかかる時間は、MTのバージョンアップやサーバースペック増強などで相当早くなりました。管理画面も、エントリー作成時の関連イベントやプロジェクト情報のひも付け方など、関連情報が把握しやすくなり、更新性が高まりました。例えば、映画上映のページでは、入力項目を入れるだけで、自動的に上映カレンダーが生成されます。そのあたりのMTの使い勝手は、リニューアルによって非常に良くなりました」(渡邉さん)

今後は、マニュアルを整備すれば「自分に集約している更新作業を、誰でも担当することが可能になる」(渡邉さん)ということだ。

一方、定性的なリニューアル効果として、渡邉さんは「内部的な効果」を挙げる。

「内部で働く人は、意外とお互いのこと、自分が働いている場所のことを知らなかったりするものです。スタッフ紹介のページも含めて、YCAMのミッションや取り組みを分かりやすく伝える努力をするということが、市民を始めとした外部の人に向けたPRだけではなく、スタッフ間の相互理解や高度な連帯につながっていくように感じています。新しいポータルサイトは、特定の使い方だけに縛られない、『道具』としての柔軟性に富んでいて、そうした可能性の受け皿になっていると思います。」(渡邉さん)

情報の「縦軸」と「横軸」を意識しながら、今後も多様な情報を発信していきたい

最後に、今後のサイトの機能拡張などの展望について聞いた。

「館内に設置しているデジタルサイネージをはじめ、さまざまな端末向けの情報を、ウェブで一元管理するような、ある種のデータベースとして活用していくという方向性は、アイデアとして考えています。ウェブサイトでは、もっとページ間の横の連携を強め、ページの回遊性、回遊時間を増やしていきたいです」(渡邉さん)

一方、YCAM全体の展望としては、「アーカイブの有効活用」を挙げてくれた。

「YCAM事業の裾野が広がっていく中で、過去に携わったプロジェクト、サイト内にある過去の情報の位置づけがますます重要性を増します。いわば情報の『縦軸』の関連性です。古い情報を古く見せない、あるいは、変化が激しい中で、変わらないもの、ずっと大切にしているものがあるというのを、しっかり見せていくことが重要なポイントだと考えています」(渡邉さん)

渡邉さんは「MTは、そうした関連する情報を容易に連携させる柔軟性の高いサイト基盤だ」と語ってくれた。今後も、多様化するYCAMの活動を内外に発信していく基盤として、MTが果たすべき役割はますます大きくなっていくに違いない。

山口情報芸術センター

写真左からYCAMの渡邉朋也さん、アライアンス・ポートの川角友太さん

事例データ

  • 使用した製品:Movable Type + MT Cloud Starter Kit
  • サイトをリニューアルしたのは:2015年8月
  • リニューアルの理由:活動内容の質的変化に対応した情報構造の見直し、MTの操作性向上、サイト設計の見直しを目的として
  • 制作を担当したのは:合同会社アライアンス・ポート
  • どのような手ごたえがありましたか?:アクセス数、滞在時間の向上に加え、管理画面の操作性向上による更新性向上、内部スタッフによるサイトの活用など、さまざまな使い方が可能な柔軟性の高いサイトになった。
2015年 10月 6日      カテゴリー Movable Type

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