導入事例

デコジャパン株式会社 コーポレートサイト - Movable Type ソフトウェア版 導入事例
岡崎市民会館 公式サイト - Movable Type ソフトウェア版 導入事例
一般社団法人 西東京市伝統文化育成会 公式サイト - MovableType.net 導入事例
画家 小高朋恵 公式サイト - MovableType.net 導入事例
株式会社フラワー不動産 ウェブサイト- Movable Type クラウド版導入事例
浅野肖像画工房 公式サイト - MovableType.net 導入事例
株式会社ヨシダ工業「Glanz(グランツ)」ウェブサイト- Movable Type 導入事例

「相鉄Style」がMovable Typeを導入した理由

相模鉄道株式会社様
定期的にタウンライターとのグループインタビューを催して、直接ご意見、ご感想を伺う機会を設けており、サイト運営の参考にさせていただいていますし、そういうことを続けていると、相模鉄道そのものに好感を持っていただくお客様が増えていることを実感します。

相鉄Style」は、相模鉄道株式会社が運営する、沿線情報を発信するブログである。

ただ、企業が発信するいわゆるタウン情報とちょっと違うのは、「相鉄Style」から発信される情報は、タウンライターという、公募で集められた一般の方の手によるコラムを中心に構成されているという点だ。2004年8月のスタート以来、登録されているタウンライターの数は約280名。驚くべきことに、タウンライターが書いたコラムは、「相鉄Style」事務局側で内容を事前チェックすることはなく、紹介する店舗のチョイスから内容までほぼすべてタウンライターにお任せしている。それでいて、現在まで一定の水準以上のコラムが継続的に掲載され続けているし、これまでに運営上の大きなトラブルがあったこともないという。それは、サイト構築前に綿密なリサーチを行い、徹底して免責事項を作りこんだ賜物ということが、話を伺っていく中で明らかになってきた。

今回は、グループ経営戦略室 新規事業・情報企画担当の松下周治さん、木曽英貴さんに、280人もの人数を無理なく管理し、コミュニティサイトとして運営していく枠組みを作り出した過程を伺った。

書き手も読み手も沿線居住者とすることで口コミ効果を狙う

「相模鉄道に限らず、鉄道会社にとってもっとも有力な商圏とは沿線です。その沿線のお客様をターゲットとし、なんらかのアプローチをしていきたいとは常々考えていました。それをインターネットで行いたいと考えたのが、『相鉄Style』立ち上げのきっかけです」(木曽さん)

「相鉄Style」をタウンライターの手によるコラムブログとする案は、企画の早い段階から挙がっていたという。

「相鉄グループ各社とも主として沿線で事業を行っておりますが、沿線事業の情報発信を自分たちで効率的に行うことができていませんでした。ただ、以前に私どもで横浜駅周辺のポータルサイトを運営していた経験から、企業側が直接情報発信してしまうとつまらないものになるだろうな、とは思っていました。コスト的な問題もありますが、内容的にも限界が出てきてしまいますし、私どものグループ営業の情報だけですと、ユーザーを限定してしまうことにもなりかねません。そこで沿線エリア全体の活性化を大きな目標に、サイト構築を考えました」(木曽さん)

ターゲットを20代後半から30代の女性、特に主婦に絞り、口コミ情報を中心とした沿線情報を発信するブログにしようと考えた。主婦をターゲットにしたのは、「弊社グループはスーパー(そうてつローゼン)をはじめサービス業が多いですし、俗にいう、消費行動の決定権を握るゾーンですから」(木曽さん)とのことだ。

「相鉄Style」は、相模鉄道全25駅の駅名ごとに1本のブログ(例えば、横浜駅ならば「横浜Style」というブログ)を立ち上げ、それをトップページである「相鉄Style」というブログにぶら下げる形で構成されている(この形にした理由は後述)。

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25本あるブログのうちのひとつである「横浜Style」。タウンライターが執筆したコラムのほか、「お役立ち情報」として駅基点の電車やバスの時刻表、駅周辺の公共施設などのリンク集も掲載している。

それぞれの駅名ブログに、タウンライターが書いた駅周辺のオススメショップやおいしいレストラン、お得な情報などが掲載されている。「自分が気に入っている美容院はココ」「○○のスーパーでは○曜日の○時からの特売がお得です」「ココの遊歩道は散歩にオススメです」といった、大手の情報誌などではカバーしきれない、沿線に住んでいる人間ならではの情報が多いのが「相鉄Style」の特徴。しかも連日3~4本のコラムが更新され続けており、こうした情報が日々蓄積されることで「相鉄Style」をさらに魅力ある情報発信サイトとして形作っている。

「沿線居住者が発信する口コミ情報を中心にサイトを構成する」というこの狙いは当たり、開設当初の約10倍である70万PV/月間を獲得している。また、昨年末から今年(2005年12月15日~2006年1月15日)にかけて実施したサイト内アンケートでは、「『相鉄Style』を読んでお店に行ったことがある」という質問に72.7%が「よく行く」「行ったことがある」と回答、「外出前に『「相鉄Style』をチェックしますか」の問いに81.1%が「絶対にチェックする」「たまにチェックする」と回答しており、サイト認知度とリターン率の高さを示す結果が出ている。

綿密なリサーチを基にタウンライターを無理なくコントロールできる枠組みを作る

タウンライターは、相模鉄道の電車やバスなどで随時募集告知を出しており、沿線に詳しい方なら誰でも応募できる。間口が広いとコラムの質を一定にそろえることは大変そうな印象も受けるが、「相鉄Style」ではさまざまな方法でライターの質、コラム内容をコントロールする枠組みを作り上げている。

「タウンライターの採用基準はあまり厳しくしていません。沿線に詳しいことが最低条件です。その上で、沿線の関わりをPRしていただきまして、まずはテストコラムを書いていただきます。そのコラムを社内の数名でチェックして、採用かどうかを決めさせていただいています。このテストコラムがほどよいハードルとなっているようで、あまりに不適格な方の応募というのはほとんどありませんね」(木曽さん)

また、現在は50日以内に5本のコラムを書くと5,000円のパスネットを謝礼として出しており、これが行き過ぎた投稿をセーブする抑止力になっているのではという。

「弊社ではタウンライターさんをお招きして、定期的にグループインタビューを行っています。それをサイト運営の参考にさせていただいているのですが、その席で話を伺うと、こちらが思っている以上に5,000円のパスネットは魅力があるようでして。5本きちんと書かなくちゃと思われているようですね」(松下さん)

もうひとつ、ポイントとなるのがそれぞれの駅名ブログに設定されているカテゴリだという。

「サイト構築そのものの話と関わってくるのですが、『相鉄Style』を立ち上げる前に、検索ワードの洗い出しを行ったんです。すると、【駅名+○○】というキーワードで検索をするユーザーが多いということが分かりました。例えば、弊社沿線には二俣川(ふたまたがわ)という駅がありますが、【二俣川 グルメ】【二俣川 居酒屋】といった感じですね。そこで、SEO対策も兼ねまして1駅1ブログの形にし、駅ごとにキーワードを調べ、多かったキーワードをそのままカテゴリ名として設定しているのです。ですから、駅名ブログごとに、カテゴリ内容は若干違っているはずです。弊社からタウンライターさんに、書いて欲しいテーマや内容をアレコレいうことはありませんが、このカテゴリに沿ったものを書いていただきたいということはお願いしています。これによって、ある程度内容のコントロールができているかな、とは思っています」(木曽さん)

綿密なリサーチを基に事前にカテゴリをきちんと設定することによって、ユーザーが必要としている情報(管理者側から見て書いて欲しいと思っている情報)と、タウンライターが書きたいと思っている情報を無理なくマッチングさせている点が、「相鉄Style」の特筆すべきポイントといえそうだ。現在運営管理は、グループ会社の相鉄ビジネスサービス(株)に常駐スタッフ1名のみ。この少人数で運営していけるのも、この事前の枠組み作りがあってこそだろう。

ブログは「作ったら終わり」ではない

「最初、ブログというものをまったく知らなかったのですが、制作会社から提示されたときに、作ったら終わりというシステムではないということは感じましたね。私たちも腹を決めて向き合わなければならないことが多いメディアとも感じました。ですので、最初の時点で著作権、免責事項、規約などはきちんとつめて考えましたね」(木曽さん)

著作権は「相鉄Style」に帰属するが、内容の責任はタウンライターに属するなど、考えられる範囲での規約作りにはかなり時間をかけたという。しかし、クレームがくれば「相鉄Style」事務局として対応するし、どうしても期日内にコラムを仕上げられないタウンライターがいれば状況を確認した上で期間の延長を認めたりなど、フレキシブルに対応しているという。

また、当初はコメントもトラックバックも閉じていたという。「やはり、最初はリスク管理は我々の管理が及ばない範囲には広げないという方向で進めていました。最初はコラムの数も抑えていこうとしていたぐらいです。ただ、運営するにつれて、コンテンツが増える(コラムが増える)ことは私どもにマイナスな部分はないということが分かってきましたし、タウンライター同士、またはタウンライターとユーザーの間につながりが出てきたところでようやく、コメントやトラックバックをオープンにしたというところです」(木曽さん)

ちなみに、「相鉄Style」ではコメントもトラックバックも開放しているが、TypeKeyを導入しており、TypeKeyアカウントのないユーザーが書き込みをする場合は承認制となっている。双方向のコミュニティサイトを運営する上でどうしても気になるのが、こういった万が一のクレームなどのリスク管理だろう。「相鉄Style」のように状況を見ながら段階的に管理する範囲を広げていくといった周到さが、企業ブログには必要といえるだろう。

タウンライターとの交流が相模鉄道全体のイメージアップにもつながる

「相鉄Style」では、サイト自体のPRも積極的に行っている。相模鉄道の電車やバスには常時広告を掲載、グループ会社である相鉄ジョイナスやそうてつローゼンといった駅ビルやスーパーにチラシやポスターを掲示するほか、リスティング広告に出稿するなどしているが、効果はPVやタウンライターの応募者数だけでなく、スポンサーが付いてくるという形でも出始めているという。

「沿線の不動産広告を出していただいているスポンサーさんでは、実際にそれが売れたりとか、飲食系だとクーポンを実際に持ってこられたりなど、活発に動きがあるという報告は受けています」(木曽さん)
現在「相鉄Style」ではバナー広告のほか、コラムタイトルに<PR>と打つことで1ヵ月3,150円の記事広告も受け付けている。「広告収入も入りつつある状況だ」(木曽さん)という。

「サイト運営の大きな部分を、タウンライターという一般の方に委ねるのは、こちらも腹を括らなければという思いもありましたが、大きな効果もありました。なにより、沿線に詳しい方と直接接触できる機会を持てたということは大きいです。定期的にタウンライターとのグループインタビューを催して、直接ご意見、ご感想を伺う機会を設けており、サイト運営の参考にさせていただいていますし、そういうことを続けていると、相模鉄道そのものに好感を持っていただくお客様が増えていることを実感します」(木曽さん)

今後は、さらにコミュニティ色を強めたサイトにしていきたいと考えているという。
「現状、謝礼がタウンライターのモチベーションのひとつということは否定できません。ただ、さらにコミュニティ機能を高めて、ここで活動することが楽しいと感じてもらえるサイトにしていければ、金銭的なものを排除していけるのではと考えています。現在、タウンライターの規約の見直しが課題のひとつだとは思っています」(木曽さん)
今後は、タウンライターごとのカテゴリなどを設け、ライターに焦点を当てたサイト構成にしていくことも考えているという。

沿線に住む一般の人が口コミ情報を発信するという低コスト型情報発信コンテンツは、東急電鉄の「エリアマスター」や阪急電鉄の「ブログdeバーチャル駅長」など他社でも見られつつある。その先駆的存在ともいえる「相鉄Style」が今後どうなっていくか、沿線居住者ならずとも、注目していきたいところだ。

『相鉄Style』の事例データ
・Movable Type ホスティングライセンス
・サイトを公開したのは:2004年8月
・はじめた理由:沿線エリア全体の活性化
・制作を担当したのは:e-Agency
・何か手ごたえはありましたか?:ストック型の情報集積によるロングテールの創出(アクセス、スポンサーの増加、相模鉄道および沿線への好感度向上)、タウンライターによる沿線店舗への口コミ効果、沿線に詳しいタウンライターと直接交流する機会が創出できた。

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